Research Press Release
プリオンタンパク質の新たな役割
Nature Neuroscience
2010年1月25日
これまで「狂牛病」とのかかわりが示されていたプリオンタンパク質は、末梢神経の軸索を包み込むミエリン鞘の維持にも重要であるという研究報告が、Nature Neuroscience(電子版)に掲載される。これは、正常な脳の機能に謎のタンパク質であるプリオンが果たす新たな役割を示唆するものだ。
A Aguzziらは、プリオンタンパク質欠損マウスを調べた。このマウスはプリオン感染に抵抗性をもつことが知られるが、末梢神経細胞やそれを包むミエリン鞘の遅発性変性など多くの異常も示す。プリオンタンパク質が末梢ミエリンの維持にどう寄与しているか明らかにするため、神経細胞自体と、その周囲にありミエリン鞘を作るシュワン細胞とでプリオン欠損の影響を比較した。意外にも、神経細胞中のプリオンタンパク質が失われるだけでミエリン鞘の喪失が起こることがわかった。シュワン細胞のプリオンタンパク質を除去しても何の影響もなかった。
脱随したニューロンは重い健康問題につながる。ミエリン維持過程にかかわる新成分の発見により、新たな治療手段が生まれるかもしれない。
doi:10.1038/nn.2483
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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