生細胞内のタンパク質動力学
Nature Methods
2010年3月1日
単一生細胞内のタンパク質の折りたたみおよび安定性を監視する方法が、Nature Methods(電子版)に発表される。この方法により、細胞内タンパク質の機能がさらに詳細に解明されるようになると考えられる。
タンパク質の安定性および動力学は、生物学的機能と直接結び付いている。しかし、タンパク質の動力学を調べる研究は、分離されたタンパク質を用いて、細胞外の低濃度溶液中で行うものが多い。これに対し、細胞の内部は極めて混み合った環境であり、タンパク質がほかの多くの生体分子と相互作用している。そのため、真にタンパク質機能を理解するには、細胞環境という縛りの中で研究する必要がある。今回、M Gruebeleたちが発表したのは、それを行う方法である。
タンパク質は温度変化に極めて敏感であり、十分な高温では完全に解きほぐされるため、分離タンパク質の折りたたみおよび安定性を溶液中で研究する場合には、「温度ジャンプ」実験が利用されることが多い。単一生細胞内のタンパク質に着目するようにこの方法を調節するため、研究チームは、蛍光顕微鏡に赤外レーザーを装着し、極めて迅速に温度ジャンプが行われるようにした。細胞内の目的のタンパク質を蛍光プローブで標識することにより、温度が上昇するにつれてタンパク質構造が急速に変化するようすが観察された。これにより、細胞内タンパク質変性の速度論とともに、そのタンパク質の安定性に関する情報が得られた。
タンパク質の動力学の分析以外にも、この方法は、細胞集団全体のタンパク質間相互作用や熱ショック応答などの高速プロセスの研究に役立つ可能性がある。
doi:10.1038/nmeth.1435
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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