ヒトの腫瘍のタンパク質を定量する
Nature Methods
2010年4月5日
ヒトの腫瘍組織内のタンパク質を定量する方法が、Nature Methods(電子版)に発表される。この方法は、腫瘍生物学に新たな洞察をもたらす可能性がある。
大規模に細胞タンパク質を研究する「プロテオミクス」は、質量分析法を用いて日常的に行われている。質量分析法で生体試料のタンパク質量を定量測定するために、多くの方法が開発されてきた。その1つが、SILAC法(培養細胞内のアミノ酸による安定同位体標識法)である。SILAC法では、内部定量標準として用いる生体試料内のタンパク質が、「重い」同位体を含むアミノ酸で「標識」され、その質量が質量スペクトル上でシフトする。それが、標識されていない被験試料と比較される。これにより、質量分析法による被験試料の定量分析が、極めて正確なものになる。しかし、通常この方法が適用可能なのは、重いアミノ酸で完全に代謝標識することができる細胞または生物に限られる。
今回M Mannたちは、SILAC法に工夫を加え、代謝標識することができない初代ヒト組織のタンパク質が定量されるようにした。腫瘍を含め、ヒト組織は、異なるレベルでタンパク質を発現するさまざまな種類の細胞から成り立っている。特定の腫瘍に存在する各種の細胞およびタンパク質を分析するため、研究チームは、複数の異なる不死化ヒトがん細胞株の混合物を重いアミノ酸で標識した。この混合物が、腫瘍組織プロテオームの質量分析法による定量で、内部標準として利用された。この「超SILAC」法により、乳がんや脳腫瘍などの初代ヒト腫瘍組織が含むさまざまなタンパク質を正確に定量することができた。
この超SILAC法は、腫瘍生物学研究に有用であるばかりでなく、がんを早期発見するためのタンパク質バイオマーカーの発見への応用も考えられる。
doi:10.1038/nmeth.1446
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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