Research Press Release
生細胞に適合する液晶ゲル
Nature Materials
2010年6月14日
生細胞に適合するゲルや麺状の糸をつくる方法が、Nature Materials(電子版)に報告される。この研究結果は、例えば心臓や脊髄などでの体内長距離信号伝達向けに、その系が細胞足場として有望であることを示している。
S Stuppらは、ペプチド懸濁液を加熱して、2次元平面シートを作製した。そのシートは冷却すると分解されて液晶を形成する。この液晶に細胞を混ぜた後、ピペットを使って塩溶液中に流し出すと、細胞が封入された整列ファイバーからなる麺状の糸ができる。この種のゲルは、このような熱的過程を経た場合にのみ得ることができる。今回の方法は、人工的に整列させたファイバーを作る既存の方法にみられるような、生細胞に害を与えうる機械的、電気的過程が不要である。
研究チームは、心筋細胞を封入した糸が構造全体にわたってどのように電気信号を伝えるかを明らかにしている。この観察結果から、今回の方法が、体内の多くの主要器官において長距離信号伝達用の細胞足場の形成に利用されうることがわかる。
doi:10.1038/nmat2778
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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