Research Press Release
単一のヒト遺伝子の発現を追跡する
Nature Methods
2010年7月19日
単一の遺伝子座からの産物を緑色蛍光タンパク質(GFP)で標識することによって単一細胞内で転写の動態を追跡することができるという研究成果が、Nature Methods(電子版)に発表される。
DNA配列のRNAコピーが作製される「転写」の程度と時期は厳密に調節されていて、遺伝子ごとに大きく異なる。転写物を標的とする従来の方法ではmRNAの平均的発現レベルに関する情報が得られるが、転写の速度や変動を調べるのにその方法を利用することはできない。
ウイルスまたは本来のプロモーターで動き、遺伝子の反対側にGFP結合部位を含む遺伝子を1コピー挿入することにより、Y Shav-Talたちは、この遺伝子の発現を経時的に追跡し、その遺伝子座でmRNA分子が何個作られるかを数えて、転写速度を計測した。ウイルスプロモーターと本来のプロモーターの転写の動態を比較すると、両者の間には大きな差が認められた。例えば、前者が転写され続けたのに対し、後者は細胞分裂の特定の時期に転写が停止したのである。単一細胞の単一遺伝子座に関してリアルタイムでこうした動態の分析を行うことにより、遺伝子の転写の調節およびそれと細胞分裂との相互作用を詳細に調べることができるようになると考えられる。
doi:10.1038/nmeth.1482
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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