Research Press Release
無菌性炎症シグナルの核となる受容体
Nature Immunology
2013年7月1日
細胞内の結晶やペプチドの凝集体は、さまざまな炎症性疾患につながるが、この凝集体形成のもとになる前駆体が、受容体CD36を介して自然免疫細胞を活性化して、炎症性メディエーターをつくらせることがわかった。この知見は、CD36が自己炎症性疾患の治療標的になる可能性があることを示している。
アテローム性動脈硬化症やアルツハイマー病、2型糖尿病などの炎症性疾患は、細胞内での結晶やペプチド原繊維の形成が引き金となる。Kathryn Mooreたちは、血中のコレステロール輸送分子の1つ、低密度リポタンパク質(LDL)の酸化に応じて、細胞表面受容体の1つであるCD36が、2通りの情報伝達系を活性化することを明らかにした。CD36を発現する自然免疫細胞は、LDLとその積み荷であるコレステロールをとらえて内部に運び込む。コレステロールが蓄積すると結晶の形成と細胞内小胞の破壊が起こり、これがインフラマソームの活性化の引き金となる。CD36は、他の受容体ともシグナル複合体を形成して、炎症遺伝子の発現を開始させる。CD36を発現しないマウスは、高脂肪の餌を摂取しても、アテローム性動脈硬化症にはならない。
doi:10.1038/ni.2639
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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