Research Press Release
イカロスの指紋判定
Nature Immunology
2013年9月9日
DNAに結合する転写因子イカロス(Ikaros)にはいわゆる「ジンク・フィンガー」ドメインが4個含まれ、それらが異なった組み合わせで同時に作用することによって、異なった遺伝子を調節することが明らかになった。これらの遺伝子には、白血病の抑制に必要な遺伝子などが含まれる。
多くの転写因子には、DNAに結合して遺伝子発現を制御するジンク・フィンガードメインと呼ばれるドメインが存在する。イカロスは免疫細胞の発生を調節することが知られているが、個々のジンク・フィンガードメインが遺伝子発現の制御にどのように関わっているかは、まったく解明されていない。これまでの研究では、フィンガー2とフィンガー3がDNAの結合に必要なことと、この2つを挟む位置にあるフィンガー1とフィンガー4は塩基配列の認識に関わることが明らかになっている。さらにヒトでは、イカロスをコードする遺伝子IKZF1の変異が、白血病の複数のタイプに関連していることがわかっている。
ジンク・フィンガー1と4の機能を理解しようと、Steve Smaleたちはドメイン1か4を欠失させたイカロスをもつマウスを作製した。ジンク・フィンガーの特異的欠失により、免疫細胞の発生に異なった異常が生じた。特に重要なのは、フィンガー4を欠失させたマウスが胸腺リンパ腫を発症したことで、イカロスのフィンガー4に腫瘍抑制機能があることが明らかになった。
doi:10.1038/ni.2707
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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