Research Press Release
【気候科学】アルプス地方での冷夏と洪水頻発
Scientific Reports
2013年9月26日
過去2,500年間のヨーロッパ・アルプス地方での豪雨事象が包括的に再構築され、洪水が頻発した時期と夏季の気温が低く推移した時期が一致する傾向が示唆されている。この研究結果は、気候変動下の異常気象の予測精度を高めるうえで役立つかもしれない。
全球的な気候変動の下で中央ヨーロッパの夏の平均気温は上昇し、夏季の総降水量は減少することが予測されている。これに対し、洪水の発生頻度も上昇する可能性があり、そうなれば、被災地域のコミュニティー、社会基盤と人命に対するリスクも上昇する。アルプス地方も例外ではない。しかし、豪雨事象といった異常気象の予測は難度が高い。
今回、Lukas Glurたちは、スイス・アルプス地方の10か所の湖の堆積物を調べて、放射性炭素分析による年代決定を行った。湖沼堆積物には、過去の洪水事象がそれぞれ独自の堆積層として残っているので、洪水活動が正確に反映されている。Glurたちは、冷夏の時に洪水が最も頻繁に起こる傾向を明らかにし、こうした高降水量と低温の同時発生のきっかけが大西洋と地中海上の低気圧の進路に緯度方向の変化が生じることだと考えている。今回の研究で示された古気候学的見方は、全球的な気候変動が異常気象事象に影響を及ぼす過程の解明に寄与し、今後の気候温暖化における洪水リスクの評価を改善できる可能性がある。
doi:10.1038/srep02770
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