Research Press Release
インフルエンザ全般に対する防御を誘導
Nature Immunology
2013年10月21日
インフルエンザウイルスの複数の株に対して防御効果が得られるワクチン戦略の報告が寄せられている。
インフルエンザウイルスは急速に変異するため、現在のワクチンによって作られる抗体では認識されないウイルス株が、すぐに生じてしまう。そのため、インフルエンザの季節が来るたびに、そのときに流行しているインフルエンザウイルスに対するワクチンが必要になるが、新たに出現したウイルス株がワクチン製造株に含まれず、免疫防御に隙ができてしまう可能性がある。
Maureen McGargillたちは、ラパマイシン(宿主の酵素mTORを標的とする薬剤)の存在下で、マウスにH3N2インフルエンザウイルスに対する免疫をつけさせた。すると、その後にH1N1ウイルス、H5N1ウイルス、新たに出現したH7N9ウイルスに出会ったときに、これらに対しても防御免疫を誘導することができた。ラパマイシンは、H3N2ウイルスに対する高親和性抗体の産生を阻害し、代わりに、ウイルスのよく保存された配列に対する免疫記憶と抗体応答を誘発する。したがって、ワクチン接種の際にラパマイシンを使って免疫応答を抑制すると、逆に、幅広いインフルエンザウイルス株に対して防御機能が増強される。
doi:10.1038/ni.2741
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
生物学:全ヒト細胞アトラスの作成Nature
-
天文学:近くの恒星を周回する若いトランジット惑星が発見されるNature
-
気候:20世紀の海水温を再考するNature
-
健康科学:イカに着想を得た針を使わない薬物送達システムNature
-
化学:光を使って永遠の化学物質を分解する新しい方法Nature
-
生態学:リュウキュウアオイが太陽光を共有するNature Communications