脳卒中後の神経発芽を調節する遺伝子群
Nature Neuroscience
2010年11月8日
脳卒中後の回復に伴う成長を示す神経細胞と示さない神経細胞の遺伝子発現の違いが、Nature Neuroscience(電子版)の論文で報告されている。この発見は、ヒトの脳卒中の新たな治療標的を特定する可能性を秘めている。
脳卒中からの回復は、脳が傷ついた組織の担っていた機能を予備の領域で代行するよう再編成する能力に結びつけられていた。この再編成には、予備の神経細胞の軸索伸長、すなわち「発芽」の寄与があると考えられており、発芽によって回復中の脳内で神経が新たに結合できるようになるとされる。しかし、発芽がみられるのは余分な神経細胞の一部集団のみで、なぜこれらだけが「特別」なのかは知られていない。
T Carmichaelらは、脳卒中を起こしたラットの同一個体から、発芽した神経細胞と発芽していない神経細胞を選択的に標識し単離できる方法を開発した。次に、これら2種類の神経群の遺伝子発現プロファイルを比較し、違いを同定した。ヒトの脳卒中患者は高齢者が大多数であり、また脳卒中は加齢性疾患なので、若年ラットと老年ラットの遺伝子発現の違いを比較したところ、多くの有意な差を発見した。
実証実験として、Carmichaelらは、老年ラットで発芽している神経細胞で強く活性化した遺伝子群を選び、さらに研究を行った。彼らはエピジェネティックな調節タンパク質と増殖因子が発芽を促進するよう作用し、抑制性ミエリン受容体の発現が増加して発芽を制限するよう作用したと報告している。
doi:10.1038/nn.2674
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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