Research Press Release
【医学研究】脊髄損傷からの回復を改善する方法の手掛かり
Nature Communications
2013年11月13日
脊髄損傷を受けたラットから、神経系の瘢痕の成分であるコンドロイチン硫酸の生合成に必要な酵素を除去したところ、運動機能の回復が改善した。この研究結果は、脊髄損傷からの回復に関する理解を深めるものであり、脊髄損傷の新たな治療標的を示唆している可能性がある。
脊髄が損傷すると、グリア性瘢痕が形成される。グリア性瘢痕は、中枢神経系の機能修復に役立つが、ニューロンの再生を阻害する。グリア性瘢痕の構成成分の1つがプロテオグリカンである。マウスにコンドロイチナーゼ(プロテオグリカンの一種であるコンドロイチン硫酸を分解する酵素)を投与すると、脊髄病変の回復が改善することが知られている。今回、五十嵐道弘(いがらし・みちひろ)たちは、コンドロイチン硫酸合成酵素をノックアウトしたマウスが脊髄損傷を受けた場合、コンドロイチナーゼを投与されたマウスよりもグリア性瘢痕が小さく、ニューロンの再生が起こりやすく、四肢の運動機能が改善したことを明らかにした。そして、五十嵐たちは、その原因がコンドロイチン硫酸の濃度低下だけでなく、もう1つのプロテオグリカンであるヘパリン硫酸の濃度上昇であることも明らかにした。ヘパリン硫酸は、軸索の伸長を促進することが知られている。
doi:10.1038/ncomms3740
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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