医学研究:副作用のない鎮痛効果
Nature Communications
2013年12月18日
モルヒネの鎮痛効果を仲介する役割を担う一方で、有害な副作用を起こさないカリウムチャネルが同定された。この新知見は、副作用を最小限に抑えた痛み治療薬の開発に役立つ可能性がある。詳細を報告する論文が、今週掲載される。
モルヒネは、一部の急性・慢性疼痛の治療に高い有効性を示すが、その使用は、負の副作用を伴うために、制約を受けることが多い。主な副作用は、便秘や呼吸抑制、中毒だ。モルヒネは、モルヒネ受容体で働くことで効果を示し、痛みを伝達するニューロンの興奮性を制御するカリウムチャネルの活性に間接的に影響を及ぼすことが知られている。そうした痛覚に関係するとされるカリウムチャネルの1つがTREK-1カリウムチャネルで、今回、Alain Eschalierたちは、TREK-1のモルヒネに対する応答を調べた。そして、TREK-1を持たないマウスを使った実験が行われ、モルヒネの鎮痛効果が低下した一方で、便秘、呼吸抑制、中毒は、正常なマウスの場合と同程度だったことが判明した。この結果は、TREK-1カリウムチャネルが積極的な鎮痛効果のみを仲介することを示唆している。
今回はマウスでの研究だったが、Eschalierたちは、この新知見をもとに、TREK-1カリウムチャネルを選択的に活性化させる化合物を用いた橋渡し研究がさらに進み、その結果として、最大の効能が得られ、副作用が最小限に抑えられた新しい鎮痛薬の開発につながることを期待している。
doi:10.1038/ncomms3941
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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