Research Press Release
氷河下の空隙の融解
Nature Geoscience
2010年6月21日
西南極パイン島氷河はわずか数十年前までは海底下の海嶺の上にあったが、現在では暖かい海水が海嶺と氷の間にあいた広い隙間を流れているとの報告が寄せられている。パイン島氷河の現在の変化は、潜在的に不安定な長期にわたる後退の一部となりうるもので、西南極氷床の広範な崩落の可能性を示唆している。
A Jenkinsらは、パイン島氷河沖の氷棚の間に出来た空隙に自律式潜水艇を入れて海洋と海底の性質を測定した。彼らは、氷床の下を温かい水が流れて氷を溶かしている証拠を見つけた。このことが意味するのは、海水面に影響を与えない陸上の氷から影響を与える漂氷への遷移を示す接地線より内陸の後退である。
関連するNews and ViewsでC Schoofは次のように述べている。「Jenkinsらにより報告されている観測は、南極氷床の下で最も速い融解速度の1つを支配している過程に対して全く新しい洞察を提供している」。
doi:10.1038/ngeo890
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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