がん細胞を可視化
Nature Medicine
2014年3月3日
ヒトの乳がん組織切片で、金属アイソトープで標識した臨床的に重要な抗体100種類を、同時に可視化できる画像化法の報告が寄せられている。この方法によって、病気の発症機序に関する重要で正確な情報が得られ、臨床診断に役立つ可能性がある。
免疫組織化学検査と免疫蛍光法は、色素分子と蛍光シグナルを利用してタンパク質を可視化する方法で、組織切片を用いる臨床診断に不可欠な手法になっている。しかし、技術的な欠陥、実用上の欠点のために、用途が限定されてしまう。特に、組織や細胞で発現されている複数の抗原の定量分析には適していないが、生検試料の分子的性質、形態的性質を理解するためには、このような分析が必要になることが多い。
Garry Nolanたちは、新しい分析方法を開発してマルチプレックスイオンビーム画像化法(MIBI)と名付けた。この方法は、臨床施設で広く使われている標準的なホルマリン固定したパラフィン埋め込み型腫瘍組織切片を用いて、同時に多数の分子マーカーを高感度で解析できる。NolanたちはこのMIBIを用いて、臨床的に重要な金属結合抗体で染色した乳がん組織切片の画像化を行い、この技術が診断に役立つ可能性があることを実証した。
この方法のおかげで、腫瘍の発症機序や腫瘍の不均一性、経路の活性化状態について、単一細胞レベルで新たな知見が得られる。臨床施設で診断目的で使うには、まだある程度の制約はあるものの、この方法はがん患者を分類するのに役立つだろう。
doi:10.1038/nm.3488
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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