【微生物学】古代のヒト標本で死因となった「犯人」の細菌を特定
Scientific Reports
2014年3月6日
古代のヒト遺骸を感染症についてスクリーニングするための新しい方法が、今週報告された。この原理証明研究では、歴史時代の2つのヒト標本で過去に確認済みの病原細菌のDNAを、微生物検出アレイを使って正確に特定することができた。この手法は、ヒトの保健衛生を時空を超えて調べるための有効で費用の掛からない古病理学研究の手段となる可能性がある。
感染症の起源と公衆衛生について研究する際に直面する難題の1つは、古代のヒト遺骸に含まれるDNAが通常、大きく劣化・分解しており、感染していた病原体のDNAがそのうちごく少数の成分として含まれていることである。そのため、塩基配列に基づくメタゲノム解析では高コストとなり、時間もかかってしまう。Hendrik Poinarたちは今回、現代の臨床標本で汎用性が十分に確認されているマイクロアレイ法を使うことで、構成の複雑な標本内の微生物多様性を迅速かつ包括的に捉えられる可能性があることを示した。この方法であれば、ハイスループット・スクリーニング法のように解析に長い時間や高い費用が掛かることもない。
今回の研究では、ローレンス・リバモア微生物検出アレイ(LLMDA)を使って、西暦1849年の腸管標本に含まれるコレラ菌(Vibrio cholerae)など、また、1348年の歯に含まれるペスト菌(Yersinia pestis)など、過去に検出済みの多数のヒト病原細菌を確認することができた。この知見から、LLMDAによって、古代の標本に含まれている死因となった病原細菌や共感染していた病原細菌を特定できることが実証された。また、微生物のプロファイルを短時間に安価かつ高精度で再構築できるマイクロアレイ法が、考古学標本をスクリーニングするための有用な手段にもなりうることが明らかになった。
doi:10.1038/srep04245
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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