【生態】鳥の糞のふりをするクモ
Scientific Reports
2014年5月29日
鳥の糞に変装して、捕食者の攻撃を避けているクモの存在が明らかになった。コガネグモ科のギンナガゴミグモ(Cyclosa ginnaga)の巣の装飾と体色の組み合わせによって、その捕食者が、このクモと鳥の糞を区別できないことが分かったのだ。研究の詳細を報告する論文が掲載される。
多くの動物は、それぞれ独自の体形、体色、模様を使って、背景に溶け込んだり、他の動物を模倣したり、あるいは無生物に変装したりして、捕食者を回避している。ギンナガゴミグモは、銀色の胴体を持ち、獲物を引き寄せる機能のある白い円盤をクモの巣上に作り出しているが、こうした特徴のために、捕食者のスズメバチの目につきやすくなっている。ヒトが見ると、こうした大きさ、色と形の胴体を持つギンナガゴミグモがクモの巣の装飾を背にすると、鳥の糞にそっくりであり、ギンナガゴミグモが鳥の糞に変装して捕食を回避しているという仮説が提唱されている。今回、I-Min Tsoたちは、スズメバチがギンナガゴミグモを見ている状態を再現して、ギンナガゴミグモとそのクモの巣の装飾が、色と大きさの点で鳥の糞とほぼ同じように見えることを明らかにして、この仮説の正当性を裏付けた。また、Tsoたちは、クモの巣または胴体を炭素粉で黒く塗った場合に、ギンナガゴミグモに対するスズメバチの攻撃確率が、通常の体色とクモの巣の場合よりもはるかに高くなったという観察結果も示している。
こうした新知見からは、ギンナガゴミグモが、胴体とクモの巣の装飾の組み合わせによって鳥の糞に変装して、捕食者から身を守っていることが示唆されている。ただし、この結論については、今後、別の説明の仕方との比較検証が必要だとTsoたちは考えている。
doi:10.1038/srep05058
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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