Research Press Release
鞭虫のゲノム塩基配列
Nature Genetics
2014年6月16日
寄生性の鞭虫3種のゲノム配列の解読と解析が、2つの独立した研究によって行われた。鞭虫感染と炎症性腸疾患(IBD)の新しい治療法の開発につながる可能性がある。
鞭虫の感染者数は、全世界で約10億人。腹痛、下痢、貧血などの症状が見られ、子どもは栄養失調や発育不全を起こすことがある。
M Berrimanたちは、鞭虫の2つの近縁種(ヒト鞭虫Trichuris trichiuraとマウス鞭虫Trichuris muris)のDNA配列解読を行った。そして、鞭虫に感染したマウスに生じる遺伝的変化を観察し、その結果をヒトの鞭虫感染に当てはめて考察した。その結果、鞭虫症に関係する可能性のある鞭虫の遺伝子が数多く見つかり、さらには、既存の薬剤の標的となりうる鞭虫の必須遺伝子29個も同定された。
一方、A Jexたちは、ブタに感染するブタ鞭虫Trichuris suisのゲノム配列の解読を行った。T. trichiuraが病気を引き起こすのと異なり、ブタ鞭虫の卵をヒトが服用すると、過剰な免疫応答の抑制を通じて、炎症性腸疾患の治療に役立つことが判明している。Jexたちは、免疫応答を調節するブタ鞭虫の遺伝子を数多く同定している。
doi:10.1038/ng.3010
doi:10.1038/ng.3012
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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