【老化】炎症が老化において果たす役割
Nature Communications
2014年6月25日
マウスにおいて慢性の軽度炎症から細胞老化と個体老化が起こる機構を示した論文が、今週掲載される。
慢性炎症は、正常な老化と病理的老化のいずれにも関連している。テロメアの損傷が起こると、細胞老化が始まり、生きた細胞の成長と分裂が止まるため、体内の組織が再生し、自己修復する能力が制限される。これは、老化時の内臓器官の機能維持にとって最も重要な能力だ。
今回、Thomas von Zglinickiたちは、遺伝子操作マウスが慢性で進行性の軽度炎症にかかると、早期老化が起こることを明らかにした。その原因について、Zglinickiたちは、活性酸素種(酸素を含む化学反応性分子)によってDNAが損傷して、そのためにテロメアの短縮が進み、その結果として、老化細胞の蓄積が促進されるという仮説を示している。細胞老化が進むと、慢性炎症が悪化し、組織の再生が抑制され、老化がさらに加速するのだ。また、Zglinickiたちは、抗炎症薬イブプロフェンや抗酸化剤の投与によって、炎症が発生した組織における老化細胞の蓄積が阻止され、組織の再生能が回復することも明らかにした。
これらのデータは、他の遺伝因子や環境因子が存在していなくても、炎症が起こると、老化が加速することを示している。しかし、老化過程におけるこうした相互作用の分子機構と細胞機構は十分に解明されていない。それに加えて、マウスの老化を誘導するために用いる遺伝的修飾には重篤な病変を伴う。従って、今回の研究による観察結果が、正常な老化とヒトの老化にとってどの程度重要な意味を持つのかという点には、不透明性が残っている。
doi:10.1038/ncomms5172
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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