Research Press Release
【環境】ヨウ化メチル燻蒸剤が水中の無機水銀をメチル化する
Nature Communications
2014年8月20日
広く用いられている燻蒸剤のヨウ化メチルが、太陽光の下で、水中に含まれる水銀をメチル化する経路が新たに明らかになった。ヨウ化メチル燻蒸剤がこれまで考えられていたほど安全ではなく、総合的なリスク評価が必要なことが、今回の研究によって示唆されている。
1990年代にオゾン層を減少させる臭化メチル(CH3Br)燻蒸剤の代替品としてヨウ化メチル燻蒸剤が推奨されて以降、ヨウ化メチル(CH3I)の環境中への放出量が増加している。ヨウ化メチルは、安全な代替品で、環境への影響が最小限に抑えられていると考えられていた。また、ヨウ化メチルは、水中環境で一部の金属をメチル化するが、最も多く存在する水銀種である無機Hg2+を直接メチル化して、より反応性が高く、有害なメチル水銀に変化させることはできないと考えられていた。
今回、Guibin Jiangたちは、ヨウ化メチルによる無機水銀のメチル化が、これまで知られていなかった太陽光を介した2段階の過程を経て、自然水中で起こることを明らかにした。こうしたヨウ化メチルの存在下での光メチル化は、水中環境におけるメチル水銀を増やすおそれがある。この新知見に照らし、今後のヨウ化メチル燻蒸剤の使用は、慎重に検討すべきであろう。
doi:10.1038/ncomms5633
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
考古学:デジタル地図によりローマ帝国の道路網が10万キロメートル増えるScientific Data
-
神経科学:時間の経過とともに発達する脳の変化を解明するNature
-
人工知能:より公平な人間画像データセットを目指してNature
-
気候:極端な強風がタービンの限界を超えて動かす可能性があるNature Communications
-
地球科学:南極氷河の急速な後退Nature Geoscience
-
健康:適度な日常的な活動はアルツハイマー病に関連する認知機能の低下を遅らせるかもしれないNature Medicine
