Research Press Release
2型糖尿病に新しいタイプの薬の可能性
Nature Medicine
2014年10月6日
ニクロサミドは現在寄生虫感染の治療に使われている薬だが、その誘導体が糖尿病の合併症を緩和することが、2型糖尿病のマウスモデルで明らかになった。
ニクロサミドは、寄生虫のミトコンドリアのATP(細胞のエネルギー源)合成能を低下させることによって、寄生虫の成長を阻害する。Victor Jinたちは、このATP合成阻害活性を2型糖尿病の治療に活用しようと、ニクロサミドの塩、ニクロサミドエタノールアミン(NEN)を遺伝性のマウスモデルと食餌性マウスモデルに投与した。するとNENが肝臓に選択的に蓄積し、肝臓でのミトコンドリアのATP合成能を低下させることが分かった。細胞のATPレベルが低下すると、シグナル分子が活性化され、肝細胞に貯蔵脂肪の燃焼量を増やすよう、情報を伝達する。
2型糖尿病の特徴の1つは、細胞がインスリンに反応しなくなるインスリン抵抗性で、その結果、血糖値が上昇する。Jinたちによれば、肝細胞の脂肪が減少すれば、肝細胞がインスリンに反応できるようになり、血糖値が低下するという。NENを投与したマウスの肝臓では、細胞内の脂肪の燃焼が亢進することにより、2型糖尿病によく見られるもう1つの合併症である脂肪肝の発生も減少した。
doi:10.1038/nm.3699
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