Research Press Release
小児脳腫瘍の新しい治療法候補
Nature Medicine
2014年11月18日
悪性度の高い致命的なタイプの小児脳腫瘍に対する新たな治療選択肢候補が、マウスを使った実験で見つかった。この結果は、がん患者とそのがんに見られる遺伝的変異に特異的に効く薬とを、精密診断に基づいて組み合わせる「精密医療」の可能性を具体的に示したもので、この型の小児期腫瘍に対する治療を進展させる可能性がある。
びまん性内在性脳橋グリオーマと呼ばれる小児脳腫瘍には、現在はほとんど治療法がなく、しかも腫瘍が脳の重要な領域全体に散在するため、外科手術も行えない。最近の遺伝学研究により、この型の腫瘍では、ヒストンの1つに遺伝的変異が高頻度で生じていることが分かっている。ヒストンはDNAを小さくまとめて細胞に収める役割を果たすタンパク質で、遺伝子発現を調節している。この病気では、ヒストンの遺伝的変異のために、本来ならヒストンを修飾するはずの調節複合体の働きが阻害されて、広い領域でがん性の変化が引き起こされる。
R Hashizumeたちは、このようなヒストンの変異が見られる腫瘍を持つマウスで、働きが阻害されている調節因子と同じ経路に作用する既存薬が、変異の影響を軽減するかどうかを調べた。定着した腫瘍にこの薬を投与するとマウスの生存率が上昇することを、著者たちは報告している。
doi:10.1038/nm.3716
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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