デング熱を退治
Nature Immunology
2014年12月16日
デングウイルス(DENV)を中和できる、非常に強力で幅広い反応性をもつ新しいタイプの抗体の報告が寄せられている。蚊の体内に存在する型も含め、このウイルスの4つの型をすべて中和できる抗体の初めての報告であり、効果的なワクチンや治療法の開発に結び付く可能性がある。
デング熱は蚊が媒介するウイルス感染症で急激に増えており、毎年の感染者数は4億人と推定されている。DENVの分布地域は拡大し続けていて、米国南部、オーストラリアも脅かされており、欧州南部にも広がる懸念がある。ある型のウイルスに感染すると、その型のウイルスに対しては終生免疫を獲得するが、他の型に対してはそうならない。さらに、ウイルスの一生の間にカプシドが極端に変化することが、抗体によるウイルス粒子の認識を難しくしている。そのため、DENVの自然感染に対するヒトの免疫応答やワクチン接種後の免疫応答の解明が、急ぎ求められている。
Gavin Screatonたちは、デングウイルスに感染している患者から多数の抗デングウイルスモノクローナル抗体を得て解析した。そして、ウイルス中和効率の非常に高い新しいタイプの抗体群を発見した。この抗体群が結合するのは、新たに発見されたエピトープ(抗体が認識して結合する特有の構造)で、4種類すべてのDENVのエンベロープに存在する。実験室での試験で、このエピトープを認識できる抗体が、昆虫細胞、ヒト細胞のどちらが作ったウイルスでも効率よく中和することが明らかになった。この発見によって、強力で広い中和能力を持つ抗体の開発が実現可能な今後のワクチン開発の目標となり、また、DENVに共通に使える万能ワクチンへの道が開かれた。
doi:10.1038/ni.3058
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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