【動物学】カギムシの粘液噴射が高速振動するメカニズム
Nature Communications
2015年3月18日
カギムシの粘液噴射は高速振動するが、こうした動きは神経筋制御では実現できない。今週掲載される論文では、カギムシの独特な粘液噴射は流体力と弾性を利用したものであることが報告されている。これにより、カギムシは素早く粘液を吹き付けてクモの巣状のパターンを作り出し、獲物の捕獲と脅威の抑止に生かしている。
カギムシは環節のある生物で、熱帯に生息し、多数の脚対と素早い粘液噴射を特徴としている。この粘液噴射は、自然界で数少ない高速振動する流体噴射の一例だが、その正確な制御機構は分かっていない。流体噴射の振動を実現する他の生物種(例えば、ドクハキコブラやヤマシログモ属のクモ)は、頭部を激しく動かしているが、カギムシの頭部は動かない。
今回、Andres Conchaたちは、高速度撮影を行って、高速振動する粘液噴射の速度がカギムシの既知の筋収縮速度を超えていることを明らかにして、カギムシの独特な粘液噴射が筋肉の収縮によるという仮説を否定した。そして、Conchaたちは、カギムシの解剖学的構造を調べた上で、口についた乳頭状突起につながった管を通して粘液が噴出する過程を模倣した合成機構を開発した。
Conchaたちは、生体から着想した軟質の弾性チューブを用いて注射器のような働きを作り出し、カギムシの粘液貯留領域の収縮において観察された振動運動を再現した。さらに、この振動運動の理論的解析が行われ、この振動運動が、流体慣性と弾性抵抗の競合による不安定性の結果として生じたものであり、庭の水まき用ホースをつなげた水道栓の蛇口を急に開いた場合に放置されたホースの先が振動する現象に似ていることが示唆されている。
doi:10.1038/ncomms7292
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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