【太陽物理学】地磁気嵐の予測精度を高める新知見
Nature Communications
2015年5月27日
太陽の磁場による太陽嵐の誘導が太陽嵐の向きに影響を及ぼし、その結果として、地球に大きな擾乱が発生する可能性があるという報告が、今週掲載される。この新知見は、2014年1月のコロナ質量放出(CME)が地球に到達しなかった理由を説明でき、破壊力のある太陽嵐について、モデル化を改善し、今後の予測精度を高められるかもしれない。
1兆キログラム台の質量が太陽から放出されるCMEは、地球での大きな擾乱(例えば、大停電、人工衛星の故障)につながることがある。政策立案者たちは、CMEが深刻な自然災害であり、そのためその影響についての信頼性の高いリアルタイム予測を行うことが不可欠という認識を強めている。地球で発生する擾乱は、太陽の表面上のCMEの供給源の位置と関係していることが多いが、確度の高い宇宙天気予報を行うためのモデルはできていない。
今回、Christian Mostlたちは、2014年1月7日のCME事象を調査した7つの宇宙ミッションからデータを収集した。このCME事象は、地球側の活発な太陽領域からの超高速コロナ質量放出であった。そのため、地球に大規模な悪影響が及ぶという予報が発表されたが、この極めて深刻な太陽嵐は地球には到達せず、地磁気の擾乱も起こらなかった。
Mostlたちは宇宙ミッションによるデータを用い、太陽から地球までのCMEの変化についてのモデルを作成した。なお、火星までのCMEの変化についてはキュリオシティ・ローバーによる観測データが用いられた。Mostlたちは、その独自のモデルを基に、このCMEが太陽の磁場によって縦方向に誘導されたことを報告している。今後の宇宙ミッションによって太陽嵐の伝播の解明が進み、確度の高い宇宙天気予報が得られるようになると考えられる。このことは、CMEのような大規模な事象が惑星や宇宙船に及ぼす影響を測る上で不可欠だ。
doi:10.1038/ncomms8135
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
生物学:全ヒト細胞アトラスの作成Nature
-
天文学:近くの恒星を周回する若いトランジット惑星が発見されるNature
-
気候:20世紀の海水温を再考するNature
-
健康科学:イカに着想を得た針を使わない薬物送達システムNature
-
化学:光を使って永遠の化学物質を分解する新しい方法Nature
-
生態学:リュウキュウアオイが太陽光を共有するNature Communications