Review Highlight
褐色脂肪組織 ― ヒトにおける新たな役割?
Nature Reviews Endocrinology
2010年4月13日
Brown adipose tissue—a new role in humans?
薬理学的介入法の新しいターゲットを見つけ出すことは、肥満の流行に立ち向かっていく上で非常に重要である。褐色脂肪組織はそのようなターゲットの一 つになりうる可能性がある。褐色脂肪組織は白色脂肪組織とは違い、トリグリセリドとして脂肪を貯蔵するのではなくむしろ熱を産生することによって、エネルギーを消費させる能力を有している。小型の哺乳動物では、活性化褐色脂肪組織の存在は体温調節を維持する上で非常に重要であり、恐らく、過剰なエネルギー摂取による有害な作用から生体を守っている可能性がある。動物実験の成績からは、褐色脂肪組織の増大および/ または活性化が、食餌誘発性の体重増加やそれに関連した2 型糖尿病のような病的状態を軽減させることが明らかにされている。また、いくつかの独立した研究からは、ヒトの成人に機能的褐 色脂肪組織が存在することが現在確認されており、この組織はヒトにおいて、BMI 低値および脂肪組織の総量低下のいずれにも関連した代謝的に有益な作用を有している可能性がある。過去2、3 年の間に、褐色脂肪組織の転写コントロールや発現に関する知見が非常に増えてきた。また、薬理学的手法によって褐色脂肪組織を増大および/ または活性化させる上で有用と考えられる、いくつかの可能性のあるターゲットが見出されてきている。肥満との戦いにおいて褐色脂肪組織が有用であるか否かについては今後検討すべき課題である。しかしながら、この可能性が価値の高い研究課題であることは間違いない。
doi: 10.1038/nrendo.2010.64