Test your memory―待合室の認知症検査
Nature Reviews Neurology
2009年8月1日
Dementia Test your memory—a waiting room test for dementia
1 件の横断的研究により、「test your memory」(TYM)が、アルツハイマー病(AD)の検出に際して検出力があり妥当性の証明された検査法であり、早い段階の 認知症にも使用可能で、高い感度と特異度を有していることが確認された。「TYM により、一般的な臨床経過をたどる多くの患者を素早く効果的に、AD やおそらくほかの認知症についても、スクリーニングする ことができる」と、筆頭著者である、Addenbrooke 病院神経内科(英国ケンブリッジ)のJeremy Brown 氏は述べている。
現在多くの医師たちは、手術に外来にと忙しく、患者の認知機能を検査する時間はほとんどない。「現在のゴールドスタンダードの検査法はMinimental State Examination(MMSE)であり、それは30 年間変わらず続いてきたもので、いくつかの点では優れている。しかしMMSE を行うには8 分間を要し、検査できる認知領域は少なく、軽度のAD については比較的感度が低い」とBrown 氏は説明する。Brown 氏は、ほとんどの患者が診察開始までに30 分ほどの待ち時間があるのを見て、この時間内にできる検査法を開発しようと決心した。TYMは、患者が受付係や家族から簡単な説明を受けるだけですべて記入することができ、わずか数分で10 の認知機能を検査できるよう設計された。
この研究では、18 ~ 95 歳の対照参加者540 例にTYMの記入を依頼し、その結果を記憶外来に通う認知症または軽度の記憶障害と診断された患者139 例と比較した。対照群の平均スコアは47/50 であったが、 AD 患者群の平均スコアは33/50 であった。TYMは現在使用されている2 種類の標準検査とよく相関し、AD の診断に対して感度が93%、特異度が86%であった。
「TYMはMMSEに対して多くの点で優位性がある。医師にとって手早く済み、専門家でなくてもわずか2 分でとても正確に評価を行うことができ、AD に対する感度も非常に高い。TYMでは93%の患者を検出できるが、MMSE で確認できたのは52%だけであった」とBrown 氏は語り、さらに効果的なAD の治療法が 発見されたときには、TYMのような検査法が患者を確認する重要な方法になると考えている。Brown 氏は現在、TYMの異言語バージョン、異文化対応バージョンを作成中であり、視覚障害を有する患者のため の代替法も開発中である。また非AD 型認知症に対応するバリエーションも開発できるかもしれない。
doi: 10.1038/nrneurol.2009.109