持続性の抗IFN-β抗体はMS の進行を悪化させる
Nature Reviews Neurology
2010年4月1日
Multiple sclerosis Persistent antibodies against IFN-β worsen MS progression
オランダのVU University Medical Center の研究 結果によると、インターフェロンβ(IFN-β)に対す る中和抗体(NAb)は、治療中止後も持続的に存在 し、多発性硬化症(MS)患者において再発率を上昇 させ能力低下の進行をはやめる。同センターの研究 者Laura van der Voort は「IFN-β に対する抗体が持 続的に存在することは、治療中止後長期にわたるMS 患者の疾患活動性の亢進と関連していた。これは、こ れら患者に対してより積極的な治療が必要であること を意味している」と述べている。
MS は慢性疾患であり、若年成人における能力低下 の主な原因である。IFN-β 療法は、再発寛解型MS に対するファーストライン治療として広く用いられて いる。しかし、IFN- βによる長期治療は、多くの症例で組み換え蛋白質に対する免疫反応を引き起こすこ とが知られている。これまでの研究では、抗IFN-β NAb は治療中止後も持続的に存在することがあり、 治療効果に影響を及ぼす可能性が示されている。「わ れわれは、免疫および炎症における中心的存在である IFN-β に対する抗体を人体が産生しはじめるという 事実に魅了された。そのような抗体が持続的に存在す れば、どういうことになるか。そうした患者は癌の発 症、感染症の罹患または自己免疫疾患活性の亢進に至 る可能性が高いのだろうか」とvan der Voort は解説 している。
研究チームは、IFN-β に対するNAb が治療中止後 も持続的に存在するかどうかを確認し、また、これら の持続性NAb が疾患の進行に影響を及ぼすか評価す るため、アムステルダムのMultiple Sclerosis Center の再発寛解型MS 患者71 例の診療記録を後ろ向きに 調査した。
調査では、患者の24%が、IFN-β 治療終了後中央 値で25 ヵ月の間、抗IFN-β NAb 陽性であることを 見出した。これら患者のうち15%では抗IFN-β NAb の抗体価レベルが高かった。22μg または44μg の IFN-β1a を週に3 回皮下投与された患者は、IFN-β1b を週に1 回投与された患者、またはIFN-β1a を筋注 された患者に比べて持続性NAb 陽性の頻度が高かっ た。
調査ではまた、持続性抗IFN-β NAb は、年間再発 率の増加およびMS 進行との関連があることも示さ れた。さらに、Nab 陽性患者は、積極的なセカンド ライン療法(特にミトキサントロン)を受ける可能性 が高いことが明らかになった。
van der Voort は「(われわれの)結果を確認する ため、より多数の患者を対象とした前向き試験を実施 すべきである。われわれの調査結果から、将来の治療 選択肢は患者における持続性NAb の発現傾向に左右 されることが示唆される」と結論づけている。彼女は、 これは2006 年に始まった大規模な欧州のプロジェク トNABINMS(Neutralizing Antibodies on IFN-β in Multiple Sclerosis)が取り組んでいるトピックス の一つであると付け加えた。
doi: 10.1038/nrneurol.2010.26