あるチロシンキナーゼ阻害剤によりラットの関節リウマチを治療できる
Nature Reviews Rheumatology
2009年1月1日
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Fc 受容体を介した免疫複合体シグナル伝達への反応が、関節リウマチ(RA)の発症に関与している。Spleen tyrosine kinase(Syk)は、免疫複合体を介し たシグナル伝達の重要な構成要素である。Pine らは、RA のラットモデルで、小分子Syk 阻害剤R406 の抗RA 活性を検討した。R406 およびそのプロドラッグR788 は、コラーゲン誘導関節炎のラットにおいて、骨びらんと関節炎症を抑制した。
II 型コラーゲン注入から10 ~ 11 日後に、ラットは重度の臨床的関節炎を発症した。1 本以上の後肢に炎症(臨床的関節炎スコア:1)が認められたラットに対し、R406(10 または30mg/kg)または対照薬 の1 日2 回投与を開始した。対照群では、平均関節炎スコアが最高5.6 ± 0.5 となり、試験期間の18 日間を通じて変化しなかった。R406 の30mg/kg 群では、試験終了時には関節炎が完全寛解となった(関 節炎スコア:0.1 ± 0.1)。10mg/kg 群では、対照群に比べて発症が遅延し、RA の重症度が軽減した。プロドラッグR788 もRA の重症度を軽減させた。後肢のX 線検査では、対照群に比べて、R406 群およびR788 群で、骨びらんに対する有意な保護作用が認められた。関節炎ラットで上昇していたサイトカイン濃度は、R406 との併用により完全に抑えられ、抗腫瘍壊死因子抗体の半減期はR406 の同時投与により有 意に延長した。
著者らは、R406 のSyk 阻害作用により、RA における骨びらんおよび炎症が抑制され、抗RA 生物学的製剤の半減期が延長されると結論づけた。現在、R406 の第II 相臨床試験が行われている。
doi: 10.1038/ncprheum0669