ラブリシンは摩擦を低減し、軟骨表面の磨耗および断裂を予防する
Nature Reviews Rheumatology
2008年2月1日
Lubricin reduces friction and prevents wear and tear at the cartilage surface
遺伝性の屈指- 関節症- 内反股- 心筋炎症候群(camptodactyly-arthropathy-coxa vara-pericarditis:CACP)を有する患者に生じる早熟性関節症障害は、 滑液中の糖蛋白ラブリシンの減少によって引き起こされる。Jay らは、潤滑性のあるラブリシンが摩擦による関節損傷を予防できるか否かを明らかにするた め、ラブリシン欠損マウスを用いて、健常関節における摩擦と磨耗の関連性をex vivo で検討するとともに、CACP 患者の滑液の摩擦特性についてもin vitro で検討した。
Jay らは、関節運動の振り子シミュレータを用いて、1 カ月齢および2 カ月齢のラブリシン欠損マウスおよび対照マウスの後肢における摩擦をex vivo で測定し た。また、新生仔、15 日齢、1 カ月齢、2 カ月齢のマウスの膝関節軟骨標本を顕微鏡で観察した。新生仔ラブリシン欠損マウスの軟骨表面は正常であったが、2 週齢では対照マウスに比し、膠原原線維の崩壊 によって軟骨表層が不整であった。磨耗および断裂の原因である摩擦は、対照マウスに比し、ラブリシン欠損マウスの関節で著明に増大していた。さらに、ヒト- ラブリシンを精製して原子間力顕微鏡で観察 すると、隣接する表面間の接着を弱める網状のネットワークを形成していた。さらに、CACP 患者6 例の滑液にはin vitro 系で摩擦を低減するための正常な 能力が欠けていた。
以上の結果は、ラブリシンが関節の潤滑に不可欠であることを示し、炎症やまたは外傷によって一時的にラブリシンが欠乏することによって関節障害リスクが増加し得ることを示唆している。
doi: 10.1038/ncprheum0689