自然発症自己免疫性関節炎の新しいトランスジェニックマウスモデル
Nature Reviews Rheumatology
2008年5月1日
New transgenic mouse model of spontaneous autoimmune arthritis
Journal of Immunology 誌のRankin らの論文は、自然発症自己免疫性関節炎の新しいトランスジェニックマウスモデルに関するものである。自然発症自己 免疫性関節炎では、自己反応性CD4+ T 細胞が代理(surrogate)自己抗原を認識することで疾患が生じる。彼らは、このモデルを用いた研究により、ヒトにおいて特定のMHC クラスII 対立遺伝子が関節リウマチ感受性を付与するメカニズムに関する洞察が得られ、新しい治療法が評価できるようになると考えている。
著者らは、2 系統のマウス(TS1 マウスとHACIIマウス)を交配した。TS1 マウスは、赤血球凝集素エピトープ(代理自己抗原)を認識するT 細胞受容体導入遺伝子を発現している。HACII マウスはMHC クラスII プロモータの制御下で抗原提示細胞(APC)上に赤血球凝集素を発現する。大半のTS1×HACIIマウスは成人発症の関節炎を自然発症した。この関節炎は、肺病変と、主たる関節に流入するリンパ節の局 所的な免疫反応を特徴としていた。重度の多発性自己免疫疾患を発症したのは少数であった。重要なことに、B 細胞を欠損させたTS1×HACII マウスも関節炎を発症した。これは、同疾患の発症が自己抗体やB 細胞活性化を介していないことを示している。
TS1×HACII マウスの関節炎は、自己反応性であるが反応性が低下したCD4+ T 細胞による、インターロイキン17 などの炎症性サイトカインの慢性的な過剰産生に起因すると考えられる。これらのT 細胞は、複数の経路の耐性誘導にかかわらず蓄積され、全身のAPC 活性化を誘導する。活性化されたAPC は膝窩リンパ節に移行し、CD4+ T 細胞との相互作用を介して関節炎を発症させるが、通常、他の臓器では、疾患の発生そのものを仲介しない。
doi: 10.1038/ncprheum0777