島領域のグルタミン酸濃度変化は線維筋痛症の疼痛変化と関連する
Nature Reviews Rheumatology
2008年8月1日
Changes in insula glutamate levels are associated with changes in fibromyalgic pain
線維筋痛症は、慢性の疼痛性障害であり、その原因は疼痛活性の増強に関連していると考えられている。興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸は、こ のような疼痛伝達の増強に関与している可能性がある。Harris らは、プロトンMR スペクトロスコピー(H+MRS)を用いて、鎮痛目的の非薬物的治療に対する、線維筋痛症患者の島領域におけるグルタミン 酸濃度の変化を測定した。
線維筋痛症の女性患者10 例に対し、治療(4 週間に9 回の鍼治療または偽鍼治療)の前後にH+MRSおよび機能MRI で評価し、臨床的疼痛および圧誘発性疼痛のレベルも評価した。グルタミン酸とその他 の代謝物の濃度は、内部標準であるクレアチニンに対する比で表した。患者の母指の爪に圧を加え、疼痛を誘発したときの神経活動レベルを機能MRI で測定した。
治療前後で、圧誘発性疼痛の閾値は上昇し、臨床的疼痛は減少した。疼痛閾値と疼痛の変化は、それぞれグルタミン酸対クレアチニン比の変化と負の相関または正の相関を示した。グルタミン酸とグルタ ミン対クレアチニン比の複合指標の変化も、圧誘発性疼痛の閾値と負の相関を示した。一部の専門家は、H+MRS がグルタミン酸とグルタミンを正確に別々に測定できるかどうかに疑義を示しており、後者の 所見が重要である。測定した他の代謝物との相関関係は有意でなかったため、疼痛の変化は特にグルタミン酸濃度と相関していると考えられる。最後に、対側の島では、神経活動の変化がグルタミン酸対ク レアチニン比の変化と正の相関を示した。
著者らは、グルタミン酸が線維筋痛症における疼痛重症度の有用なバイオマーカーとなる可能性があるとし、他の研究者に自分たちの結果を確認することを強く勧めている。
doi: 10.1038/ncprheum0850