変形性関節症の治療標的としてのアグリカナーゼ
Nature Reviews Rheumatology
2008年6月24日
Drug Insight aggrecanases as therapeutic targets for osteoarthritis
健常な軟骨では、荷重に十分耐えるために、高濃度の完全なアグリカンが必要である。変形性関節症(OA)ではアグリカンの分解と消失がみられ る。ADAMTS-4 とADAMTS-5 はADAMTS(a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin motifs)酵素ファミリーに属するアグリカナーゼであるが、そのいずれか、あるいは両方が、ヒトOA におけるアグリカン分解に関与しているのか、また疾患のどの段階でこれらの酵素が活性化されるのかは明らかでない。OA に対する疾患修飾薬(疾患修飾性抗変形性関節症薬;disease-modifying agents for OA)の候補となるものは、グルコサミン+コンドロイチン硫酸、diacerhein、ペントサンポリ硫酸などいくつかある。In vivo でのその作用機序は明らかでないが、in vitro 研究や動物モデルによるデータから、これら薬剤の有効性の一部は、前炎症性経路を阻害してADAMTS 酵素を負に制御する作用によって得られる可能性が示唆されている。癌治療に効果を示すいくつかのヒストン脱アセチル化酵素阻害薬は、ADAMTS-5 の発現を阻害する能力を有する。しかし、これらの阻害薬は、毒性が著しく低減されなければ、OA 治療法の候補とならない。現在、いくつかのADAMTS 酵素の結晶構造が、薬剤設計のために利用できることから、開発中のADAMTS 阻害薬は優れた特異性を示すことが期待される。ADAMTS-4 とADAMTS-5 は、OA 治療の標的として適切であるが、これらの酵素に対する阻害薬は最終的に、よりたくさんの治療手段の一部にすぎないであろう。
doi: 10.1038/ncprheum0841