Review Highlight
疼痛の分子基盤とリウマチ学におけるその臨床的意義
Nature Reviews Rheumatology
2009年1月1日
The molecular basis of pain and its clinical implications in rheumatology
末梢侵害刺激に反応して生じる侵害受容性疼痛や、組織損傷に起因する炎症性疼痛は、刺激が弱まるまで、あるいは組織が修復されるまでは正 常な身体機能を回復できないという警告の役割を果たす。刺激は多数の受容体、イオンチャネルやその他の細胞機構に反応を引き起こし、中枢神経系にシグナルを伝達する。中枢神経系でこの情報は処理され、疼痛として認識される。健常な人においては、組織損傷によって生理的な、通常は修復的な変化が生じ、知覚の過敏化と多くの場合疼痛が引き起こ される。リウマチ性疾患においては、関節痛に慢性炎症性疼痛と多くの共通点が認められるが、根底にある疾患の状態は通常はるかに複雑で、修復機能はまったく認められない。リウマチ性疾患の複雑な疼痛への対処は、いまだ検討中の課題である。疼痛のシグナル伝達経路には、薬物療法による介入の標的となる可能性がある分子成分が多数関与している が、この系は複雑であることから、疼痛シグナルの伝達を阻害するためには複数の部位に同時に作用しなければならないことにもなる。さらに、治療に適用可能であるためには、鎮痛薬は安全性が高く、触覚機能や覚醒レベル、認知機能を変化させないものでなければならない。本稿では、侵害受容性、炎症性、リウマチ性の疼痛経路における分子機能と、それによって得られる可能性のある治療選択肢を概説する。
doi: 10.1038/ncprheum0972