関節リウマチ(RA):ステロイド薬はメタボリックシンドロームのリスクを増加させるか
Nature Reviews Rheumatology
2010年9月24日
Rheumatoid arthritisDo steroids increase metabolic syndrome risk
グルココルチコイドは、関節リウマチ(RA)の治療に広く用いられているが、心血管に対する長期安全性が問題となっている。RAでは心血管疾患危険因子が多数存在するという研究結果から、英国の研究者らは、グルココルチコイドの長期投与とメタボリックシンドロームとの関連性を検討している。メタボリックシン ドロームの明確な診断基準は決まっていないが、一般的によく知られた心血管危険因子が集合した状態とみなされている。
Tracey Tomsらは、患者背景が明らかなRA398例からなる横断的コホートから、低用量(7.5mg/ 日未満)または中用量(7.5mg/ 日以上)のグルココルチコイドを6ヵ月以上使用している患者117例を選び出し、広く用いられている最新のメタボリックシンドローム診断基準である、米国コレステロール教育プログラムII(I US National holesterol Education Program(NCEP)III)を用いて解析した。長期グルココルチコイド投与と、メタボリックシンドロームの2 つの項目、すなわち高血圧とトリグリセリド濃度との間にのみ、有意な相関が認められた。すべての項目を統合した場合は、年齢、罹患期間、疾患活動性指標などの交絡因子で補正しても、長期グルココルチコイド投与とメタボリックシンドロームの間に相関は認められなかった。しかし、「本研究は横断研究であったため、認められた因果関係や関連の方向性に関する推論はすべて慎重に考えるべきである」と、英国ダッドリーのDudley Group of Hospitals NHS TrustのTomsは説明している。
Tomsの研究チームは、グルココルチコイド曝露とメタボリックシンドロームの間に相関が認められなかったことは、RA自体による全身性炎症の影響と関連している可能性があると示唆している。したがって、グルココルチコイドによる心血管リスク増加にさらに寄与する因子、たとえばHDLコレステロール高値や身体の脂肪・筋肉分布の変化などが重複している可能性がある。逆に、「メタボリックシンドロームに対する炎症の影響を抑えるという、グルココルチコイドによる有益な作用が有害な作用に勝っている可能性が ある」とToms は説明している。
Tomsはまた、RAにおける心血管疾患の複雑さを解き明かすためにはより多くの研究が必要だとも述べている。「この研究は、メタボリックシンドロームと総体としての心血管危険因子の両方に対する他の薬剤の影響について、関心を向けてもらうための足がかりである」。
doi: 10.1038/nrrheum.2009.61