RAの低分子薬物療法を再考する
Nature Reviews Rheumatology
2009年5月1日
Rethinking small molecules for RA
炎症性関節炎の非臨床試験において、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の低分子阻害薬がきわめて有望な治療薬であることが示されている。しかし、関節リウマチ(RA)患者を対象とした初の大規模無作為化臨床試験の結果が思わしくなかったことから、RA に対する経口治療薬としてのMAPK阻害薬の 有効性には疑問の声があがっている。The Journal of Rheumatology に掲載されたそのStanley Cohenらの試験で、MAPK阻害薬pamapimodは「RA 治療における効 果はメトトレキサートを超えることはなかった」と報告された。
Pamapimodは、MAPKのp38αアイソフォームを選択的に阻害する新規の分子薬である。このアイソフォームは、RAの病因に関与するいくつかの炎症誘発性サイトカインの産生および伝達に重要な役割を果たす。pamapimodは、多様な関節炎モデルにおいて、腫瘍壊死因子、インターロイキン(IL)-1およびIL-6のin vivo およびin vitro 産生を効率的に阻害した。さらに、Cohenはpamapimod療法について「動物実験により、炎症性関節炎モデルで大幅な改善が示された」と述べている。しかし、いくつかの第I 相試験の結果は、この種類の治療薬のベネフィットに対する疑問を払拭することはできなかった。「その懸念があったからこそ、pamapimod療法とメトトレキサート療法の比較を行った」。Cohenらがメトトレキサートとpamapimodを比較することを選択したのは、メトトレキサートがRAに対するファーストラインDMARDの「ゴールドスタンダード」であるためである。「proof-of-concept 試験でp38 MAPK阻害薬がメトトレキサートと同等であるか、これより優れていることが示されなければ、開発を続ける価値はないと考えられたからだ」とCohen は説明する。
Cohenらはこの2つの薬剤を比較するため、RA患者204 例をメトトレキサート(1 週間に7.5mgから開始し、最高で1週間に20mgまで増量)またはpamapimod50mg、150mg、300mgを1日1回投与する群に無作為に割り付けた。治療開始12週間後に、米国リウマチ学会基準の20%改善(ACR20)を満たした患者の割合は、メトトレキサート群(45%)のほうが、pamapimod群(50mg群、150mg群、300mg群でそれぞれ23%、18%、31%)より有意に高かった。さらに、ACRコアセットのいずれにおいても、メトトレキサート群のほうが3用量いずれのpamapimod群よりベースラインからの改善度が大きかった。pamapimod最高用量(300mg)群では、腫脹関節数および圧痛関節数がメトトレキサー ト群とほぼ同等に改善したが、疾患活動性および疼痛に対する効果は依然としてメトトレキサート群のほうが高かった。有害事象の発現は、pamapimod群のほうがメトトレキサート群より頻度が高く、さらにpamapimodが高用量であるほど発現が多かった。Pamapimodの有害事象プロファイルには、めまい、皮膚障害、肝酵素上昇が含まれ、これらは他のp38阻害薬で報告されているものと同様であった。
「本試験の結果をもとに、(pamapimodの)開発は棚上げされている」とCohen は言う。Pamapimod以外のp38阻害薬の臨床試験が進行中であるが、これらの薬剤がRAに対し臨床的に有用な療法であることが示されるかどうかは経過を見守る必要がある。低分子阻害薬は、非経口生物製剤に代わる、経口投与可能かつ安価な薬剤となる可能性があるため、その開発に寄せられる関心は依然として高い。Cohenは、非経口サイトカイン阻害薬のベネフィットを有する低分子薬の開発をRA治療の「聖杯」になぞらえる。少なくとも現時点では、そうした低分子薬の探索が続けられている。
doi: 10.1038/nrrheum.2009.34