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変形性関節症:膝OAに対するanakinraの単回注射は有効ではないのか

Nature Reviews Rheumatology

2009年7月1日

Osteoarthritis A single injection of anakinra for treating knee OA?

Chevalierらの研究によると、膝の変形性関節症(OA)症状に対するanakinraの単回関節内投与はプラセボよりも有効ではない。しかし、この結果にかかわらず、症候性膝OA患者の治療における本剤の研究は今後も続けるべきである。

膝OAの疼痛症状の治療によく用いられる薬理学的アプローチには、鎮痛薬、NSAID、局所コルチコステロイド注射などがある。しかし、本疾患に対する疾患修飾性薬剤はないため、多くの場合、軟骨破壊が進行し、外科的治療を要する。組み換え型ヒトインターロイキン1受容体拮抗薬(IL-1Ra)であるanakinraは生物学的製剤であり、メトトレキサートとの併用による関節リウマチへの使用が承認されている。膝OA動物モデルを用いた非臨床試験では、IL-1Raの局所投与または局所産生亢進により同疾患に伴う構造的変化が抑制されることが明らかになっている1-4。この結果は、有痛性膝OA患者に対するanakinraの関節内投与の臨床効果を示した非盲検試験で補足された。全体的に、エビデンスにより、こうした状況でのanakinraの関節内投与に関する決定的な臨床試験の確かな根拠が提供される。

このことを念頭に置いて、Chevalierら6は中等症~重症膝OAに対するanakinraの関節内投与(50mgまたは150mg)の有効性、安全性および忍容性を検討するため、12週間無作為化多施設共同二重盲検プラセボ対照試験を実施した。彼らは、一般に認められたガイドラインに従い、科学的に信頼できる試験デザインを用いた。

本試験の研究者は、いずれの用量のanakinraの関節内投与も、非臨床試験の結果とは異なり、12週間後に膝OA症状の緩和に有効でないことを見出した。つまり、試験の主要評価項目を満たさなかったのである。ところが、4日後にはプラセボではなくanakinra 150mgにより短期の著しい疼痛緩和(Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index[ WOMAC]の疼痛スコアで評価)が認められた。さらに、anakinraの安全性および忍容性は良好であった。

これらの結果は、anakinraがOA治療薬として有効でないことの確固たる証拠になるのだろうか。著者らも強調しているように、多くの理由からそうではないと考えられる。第一の理由は、組み入れ基準の1つが100mmのビジュアルアナログスケールで30mm以上と定義された疼痛であり、ベースライン時の低い疼痛レベルを反映していること。この基準は、治療反応の評価にマイナスの影響を及ぼした可能性があり、Outcome Measures in Rheumatology Clinical Trials-Osteoarthritis Research Society International(OMERACT-OARSI)転帰評価でなぜ有効例がプラセボ群に多かったのかの説明となりうる。第二の理由は、薬物動態解析から、関節でのanakinraの半減期が極端に短く、わずか数時間にすぎないことが明らかになったこと。この知見と4日目の薬物治療によるプラスの効果を考えあわせると、anakinraは、関節内IL-1Ra濃度が「治療」濃度に達した場合に限り効果を発揮することが示唆される。この効果の発現は、IL-1βに誘導される多くのOAの炎症性メディエーターの合成阻害によるものと考えられる。

したがって、Chevalierら6の知見は、症候性膝OA治療薬としてのanakinraの効果を否定するものではない。それどころか、彼らは、常に治療濃度を維持する薬剤投与の実現のために、異なる治療戦略を用いて新たな試験を行うことの必要性を主張している。今後の試験としては、たとえば、著者らの提案通り、現在、膝OAに対するヒアルロン酸の関節内投与において推奨されているように、anakinraの週1回関節内反復投与試験が挙げられよう。また、anakinraと徐放システムの組み合わせはこれに代わるアプローチとなるかもしれない。Anakinraの皮下投与は、関節リウマチ患者では効果があることがすでに明らかにされていることから、その有効性を検討することには価値があるだろう。症候性膝OAの新規治療戦略の開発にあたっては、当然ながら、生物学的製剤のコストが相当高いことを考慮すべきである。加えて、今後の研究でこれ以外のIL-1系の活性を制御する戦略についても探索する必要があろう。その中には、IL-1変換酵素阻害薬、IL-1 Trapまたは抗I型IL-1受容体抗体の使用などが含まれる。

Anakinraなど、IL-1系の阻害薬は、膝OA症状の治療および疾患修飾性薬剤としての使用に関して十分に調べられていない。これまでの臨床試験から得られた結果と教訓を考慮しつつ、この治療への包括的アプローチを行うことには非常に価値があるだろう。

doi: 10.1038/nrrheum.2009.121

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