CD70は新しい治療標的となるか
Nature Reviews Rheumatology
2009年11月1日
Experimental arthritis Is CD70 a new therapeutic target?
腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーの一員であるCD70(TNFSF7としても知られる)は、これまでバイオマーカーおよび特定の悪性腫瘍の治療標的とされていた。Ofl azogluらは現在、CD27-CD70の阻害が自己免疫疾患および自己炎症性疾患の有望な治療戦略となりうることを示唆している。さらに、CD70の発現は免疫系のエフェクター細胞に制限されるため、この治療は既存の全身免疫治療薬による治療よりも治療に関連する有害作用の発現リスクが低く、より的を絞った治療の開 発を促す可能性がある。
CD70は活性化B細胞、T細胞、樹状細胞上に発現され、リンパ球のエフェクター機能およびメモリー機能における役割が確立されている。関節リウマチ患者や乾癬性関節炎患者の滑膜由来のT細胞、ならびに疾患の重症度との相関がみられた全身性エリテマトーデス患者由来の循環血T細胞でCD70数の増加が認められている。さらに、抗CD70抗体治療は、in vitroでT細胞により誘導されるB細胞の免疫グロブリン分泌を改善した(T細胞は全身性エリテマトーデス患者から採取)。
自己免疫と炎症におけるCD70の潜在的な役割を明らかにするために、Seattle Genetics Inc(. WA, USA)の研究者らはCD70阻害が疾患の発症と進行に及ぼす影響を、コラーゲン誘発性関節炎マウスモデルを用いて調べた。CD70とその受容体CD27との結合を阻害するか、Fcエフェクター機能を使ってCD70陽性リンパ球を欠損させることによって、その効果を発揮するハムスター抗マウスCD70モノクローナル抗体を開発した。
この研究により、コラーゲン誘発性関節炎発症前の抗マウス抗体治療が、その発症を抑制することが明らかになった。しかし、さらに重要なことは、この投与により、既存の関節炎の進行が停止したことである。「関節炎治療の標的となるCD70の治療可能性を直接的に示している」と研究者の一人であるIqbal Grewalは述べている。また、CD70の阻害は、自己抗体産生、関節炎症、骨・軟骨破壊の著しい低下に関連した。「以上の結果から、関節炎の発症を招く炎症過程におけるCD70のin vivoでの役割が確立された。現在の関節炎治療の選択肢にはTNF阻害薬、抗IL-6受容体抗体であるtocilizumab、IL-1遮断薬であるanakinra、CD28共刺激阻害薬であるabataceptなどがある。抗CD70抗体は既存のレジメンを補足する新規の治療アプローチとなろう。」とGrewalは説明する。
現在の生物学的製剤治療が有効であることは間違いないが、報告された有害作用が多いことや長期的な臨床上の有効性がないことから、特異度・忍容性ともにさらに高い治療の必要性が指摘される。CD70陽性活性化リンパ球の枯渇およびCD70とCD27の結合阻害によるCD70を標的とした治療は、全身免疫抑制を誘発せずにエフェクターリンパ球を選択的に標的とする方法となるであろう。
doi: 10.1038/nrrheum.2009.198