T<sub>REG</sub>細胞療法
Nature Reviews Rheumatology
2010年1月1日
TREG CELL THERAPY
制御性T細胞(Regulatory T Cell:TREG)は、免疫細胞の活性を抑制し、それにより自己免疫疾患にみられる組織損傷を改善する能力をもつことから、TREGの能力を生かした治療アプローチは非常に魅力的といえる。しかし、抗原特異的TREGを大量に分離することの技術的問題は克服できるだろうか。Wrightらの新たな研究によって、この疑問に対する答えはYESであることが示された。 Wrightらは、2通りのT細胞受容体(TCR)遺伝子導入アプローチを用いた。第一に、初代マウスTREGにOTIITCRを導入し、オボアルブミン(ova)を特異的に認識するTREG集団を作製する方法、第二に、CD4+T細胞に同じOTII-TCRをコードするレトロウイルスベクターと、FOXP3をコードする遺伝子を導入し、これらのT細胞を、制御能をもったova特異的な細胞に変換しようとする方 法である。
この論文の筆頭著者であるGraham Wrightは「これら2通りのいずれの方法を用いても、大量の機能性の高い抗原特異的TREG細胞を3日未満で作製できた。さら に、これらの細胞はマウスで生存し、導入された遺伝子は長期にわたり安定していた」と説明している。 遺伝子改変されたこれらの細胞によって、T細胞による組織損傷がin vivoで阻止されるかどうかを検討するために、著者らは抗原誘発性マウス関節炎モデルを用いた。「事前に注射したovaが関節炎を起こした関節に存在する場合、ova特異的TREGを静脈内養子移入することによって、炎症と関節炎による破壊が十分に抑制された。一方、同じマウスでも、ovaを注射しなかった対側の関 節には、未処置の対照マウスと同程度の関節病変と炎症が認められた。このことから、有効な抑制を得るには、病変部位の抗原が重要であることが確認された」とWrightは述べている。
Wrightらの研究で、疾患の原因となる抗原以外の抗原に対して特異的なTREGが、治療効果を示す可能性を秘めていることが示唆された。多くの自己免疫疾患では起因抗原がわかっていないことから、この点は重要である。
doi: 10.1038/nrrheum.2009.244