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急性炎症性関節炎:グルココルチコイドはごく早期の関節炎に有効か

Nature Reviews Rheumatology

2010年4月1日

Acute inflammatory arthritis Are glucocorticoids of benefit in very early arthritis?

ほとんどの型の関節炎は、最初の数週間~数ヵ月の時点では「分類不能」である。この段階が、早期の治療開始によって患者の運命に影響を及ぼすことのできる唯一の機会であると考えている専門医は多い。STIVEA試験は、ごく早期の関節炎において、長期転帰の観点からグルココルチコイドの真の有効性を明ら かにしようと試みた試験であった。

「早期の炎症性関節炎」という言葉は、臨床リウマチ学においてもっとも興味深い話題の一つとなっている病態の一群を表す。早期疾患では(NSAIDに加えて)グルココルチコイドが高頻度で用いられるにもかかわらず、この方法の有効性を明らかにするデータはほとんど存在しない。Verstappenら1は、初期のグルココルチコイド治療が長期転帰に及ぼす影響の検討を目的とした、デザインの優れた数少ない無作為化対照試験の一つである、STIVEA(STeroids In Very Early Arthritis)試験を開始した。

この試験では、ごく短期間(<10週)、炎症性多発性関節炎(手の関節1つ以上を含め腫脹および圧痛関節数>1と定義)を呈する患者に、メチルプレドニゾロン80mgまたはプラセボを1週間隔で3回注射した。

STIVEA試験のもっとも注目すべき結果は、グルココルチコイド投与群ではプラセボ群に比べ、有害作用を及ぼすおそれのあるDMARD治療の必要性が統計的に有意に低下したことであった。このため著者らは、3週間のメチルプレドニゾロン治療にはある程度の有効性があるようであった、と結論づけている。しかし、絶対数でみると、この効果はそれほど大きくない。グルココルチコイド群では61%(77/126)が6ヵ月以内にDMARDを開始したのに対し、プラセボ群では76%(96/127)がDMARDを開始した。DMARDの必要性の低下はおよそ20%であった。この差は12ヵ月にわたって安定していたようであり、1年後のDMARD使用者の割合は、グルココルチコイド群約54%、プラセボ群約71%であった。これより多少目立ったのは、グルココルチコイド治療によって、DMARD療法の開始を遅らせることができた点であった。プラセボ群では、グルココルチコイド群に比べて、この救済治療の開始が早かった(中央値2.8ヵ月vs 8.3ヵ月、P =0.001)。

もっともよくみられる、そしてもっとも厄介な慢性炎症性関節疾患である関節リウマチ(RA)発症の予防については、メチルプレドニゾロンに大きな効果はないようであった。グルココルチコイド群では48.6%(54/111)が最終的にRAと診断されたのに対し、プラセボ群でRAと診断されたのは60.4%(67/111)であった(P=0.145)。

STIVEA試験における3つ目の、そしておそらくはもっとも重要な結果は、担当のリウマチ専門医によって疾患が軽快と判定された患者の割合が低かったことであった。1年以上追跡した患者222例のうち、寛解に分類されたのは33例(約15%)のみであった。プラセボ群とグルココルチコイド群の寛解率の差は、僅差で統計的に有意差が認められる様にみえたが(9.9% vs 19.8%、P=0.048)、この試験は確固たる結論を導き出すのに十分な検出力をもたなかった。この結果は、並行するSAVE(Stop Arthritis Very Early)試験の結果と一致している。SAVE試験では、グルココルチコイド治療とプラセボの差はなかったが、寛解率がSTIVEA試験と同様に低かった。

STIVEA試験のその他の副次的エンドポイント(疾患活動性指標、QOL、X線上の損傷)のいずれにも、プラセボに対するグルココルチコイド注射の優越性は認められなかった。特に、長期の低用量グルココルチコイドはX線上の進行の遅延に有効であることが知られているにもかかわらず3-5、プラセボ群で15%、グルココルチコイドで13%が骨びらんを発症したという事実は、この試験のどちらかといえば問題のある結果と考えられる。さらに、6および12ヵ月後の28関節の疾患活動性スコア(DAS28)が両群で3.2を上回っていたことから、いずれの群でもかなりの割合の患者で、DMARDの使用にもかかわらず疾患活動性が高かったことが示唆される。

診療を行う臨床医―ほとんどの場合、経験豊富なリウマチ専門医ではない―は、この試験から何を学ぶことができるであろうか。第一に、手の関節を含む2関節以上の「早期関節炎」を呈する患者に対し、「経過観察」は最悪の行為である。そのような患者では、グルココルチコイド治療を行っても、寛解の確率が20%を下回る。

第二に、メチルプレドニゾロンを3週にわたって総投与量240mgで筋肉内注射したとしても、1年後の寛解の確率がおよそ10%から20%に上昇するのみである。

第三に、この種の介入によって、RAの発症は妨げられない。

プラス面としては、グルココルチコイド治療によって、DMARDの開始が必要になる患者の割合が低下し、開始するとしてもその時点が遅くなった。この効果は、医療資源が限られている場合、あるいは、リウマチ専門医へのアクセスが多大な待ち時間によって制限されているシステムにおいて、特に重要となる可能性がある。

ごく早期の関節炎を対象としたこの試験や類似する他の試験のデータをさらに解析することは、寛解に達する可能性の高い患者、DMARD療法が必要になる患者、RAあるいは最悪の場合びらん性疾患を発症する患者を、どの特徴によって識別できるのかを知るうえで、重要であり非常に有益である。

doi: 10.1038/nrrheum.2010.39

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