Denosumabとアレンドロネートが骨構造に及ぼす作用の比較
Nature Reviews Rheumatology
2010年6月1日
Bone Comparing the structural effects of denosumab and alendronate
NF-κBリガンドの受容体活性化因子に対する完全ヒト型抗体であるdenosumabおよびビスホスホネートであるアレンドロネートは、閉経後骨粗鬆症患者における骨の構造崩壊の予防において異なる作用機序を有している。今回、非侵襲性の高分解能画像解析を用いた研究により、この2種類の骨吸収抑制薬が骨の微細構造と強度に対しても異なる作用を及ぼすことが示された。
「Denosumabは、通常用いられている治療薬であるアレンドロネートと比較すると骨リモデリングを迅速にかつ大きく抑制するが、われわれは、骨構造崩壊の進行遅延においても、denosumabのほうがアレンドロネートよりも効果が大きいかどうかを明らかにすることに関心を抱いている」と、本研究の結果を報告したJournal of Bone and Mineral Researchの論文の筆頭著者であるEgo Seeman博士は述べている。著者らは、皮質骨や海綿骨の構造など、微細構造を詳細に画 像化することが可能な高分解能末梢骨定量CT(HR-pQCT)ならびに定量CT(QCT)を用いて、治療による骨形態の変化の差を明らかにした。
50~70 歳でTスコア(二重X線吸収法で測定)が- 2.0~-3.0 であった閉経後女性を、本多施設共同二重盲検第2相パイロット研究の対象とした。参加者は、denosumabを6ヵ月毎に60mg皮下投与する群(83例)、経口アレンドロネート70mgを週1回投与する群(82例)、プラセボ群(82例)に無作為に割り付けた。患者はすべて、カルシウムおよびビタミンD補給剤も1日1回投与された。遠位橈骨および遠位脛骨のHR-pQCTならびに遠位橈骨のQCTを、ベースライン時、治療6ヵ月後、および12ヵ月後に実施した。
その結果、プラセボ群では、12ヵ月後の全骨、皮質骨、海綿骨の容積BMD(vBMD)がベースライン時よりも減少したが、アレンドロネート投与によりこのvBMD減少が防止され た。特に、denosumab群ではvBMDが増加し、全骨vBMDおよび皮質骨vBMDの増加は、アレンドロネートで認められた増加よりも大きかった。
これらの結果から、アレンドロネートは骨喪失の進行を遅らせるが、denosumabは皮質骨密度を部分的に回復させることが示される。「この理由は現在検討中であるが、われわ れの暫定的データによれば、denosumabは既存の粗鬆化空隙の修復または部分的修復を可能にすること、および新たな粗鬆化空隙の発現を防止することにより、アレンドロネートよりも皮質骨の粗鬆化空隙を大きく減少させることが示唆される」とSeeman博士は述べている。
骨代謝マーカーであるCTXやP1NPの血清中濃度は、いずれの薬剤でも大幅に低下したが(denosumab群のほうがその程度は大きかった)、プラセボによる低下はごくわずかであった。さらに、密度強調極モーメントを骨強度の推定値として用いたところ、この値はdenosumabまたはアレンドロネートによる治療後に増加したが、denosumabのほうが増加量は大きかった。皮質骨強度に対する作用がアレンドロネートよりもdenosumabのほうで大きかったことが、皮質骨の骨折リスク低下へとつながるのかどうかについては、今後の研究課題である。
「骨粗鬆化に伴う空隙の存在は、骨の脆弱化の重要な原因である」とSeeman博士は付け加え、さらに「治療の目的は、骨の構造崩壊を阻止すること、または崩壊が修復不可能な ほど重症化する前に回復させることである。今後の研究では、新たな解析手法により測定された粗鬆化空隙に治療が及ぼす影響を検討することと、この情報を用いて、骨折リスクの高い人を対象として治療を行う試みに焦点があてられることになるだろう」と述べている。
doi: 10.1038/nrrheum.2010.70