制御性T細胞は<em>in vivo</em> で骨量減少を抑制する
Nature Reviews Rheumatology
2010年8月1日
TREG cells block bone loss in vivo
Journal of Immunology に掲載されたZaissらの研究によれば、制御性T(TREG)細胞の刺激により、腫瘍壊死因子 (TNF)が誘発する骨破壊が抑制される。
著者らは以前に、TREG 細胞がin vitro で破骨細胞の分化を直接的に抑制することを示している。本研究では、in vivo での骨に対するTREG細胞の作用とTREG細胞の免疫調節作用とを区別するために、炎症性関節炎のヒトTNF-トランスジェニックマウスモデルが用いられた。このマウスモデルはT 細胞非依存性であり、局所性および全身性の過剰な骨量減少を示すという特徴をもつ。
放射線照射したTNF-トランスジェニックマウスを、転写因子FOXP3を過剰発現したマウスの骨髄で再構成したところ、TREG細胞数の増加が認められた。これらのレシピエントマウスは、TNF誘発性の局所性関節破壊および全身性の骨量減少から効果的に保護された。こうした作用には、破骨細胞分化に対するTREG細胞の影響が関与している。対照的に、TREG細胞を欠いているドナー由来の骨髄を移植されたマウスでは、破骨細胞形成が亢進された結果、骨量減少量が増加した。
著者らは、抗CD28-スーパーアゴニスト抗体を用いた薬理学的アプローチ法によるTREG細胞の増殖も行った。この抗体でin vivo 処理を行うことにより、TNF-トランスジェニックマウスにおけるTNF誘発性骨量減少が阻止され、注目すべきことに野生型マウスでは全身の骨密度が増加した。
著者らは、TREG細胞がヒトにおける骨破壊を制御するという見解を裏づけて、FOXP3+ T細胞の濃度は、関節リウマチ患者および健常対照者の末梢血中における骨破壊マーカーの血清濃度と逆相関することを報告した。
以上の結果から、TREG細胞活性の亢進は、関節リウマチ患者における炎症誘発性の構造的骨破壊を阻止する治療戦略となり得ることが示唆される。
doi: 10.1038/nrrheum.2010.109