複数部位の筋骨格痛を報告する傾向は1つの遺伝的要因により決定される
Nature Reviews Rheumatology
2010年8月1日
Osteoarthritis A single genetic factor determines propensity to report musculoskeletal pain at multiple sites
変形性関節症(OA)のような疾患では、異なる部位で報告された筋骨格痛が個々の関節に特異的な病的過程と関連するのか、それともより全般的な疼痛の傾向を反映しているのかについてはわかっていない。双子の研究においては、複数の解剖学的部位での疼痛報告パターンの分散の95%以上は、1つの遺伝的な「疼痛の共通因子」によって説明することができる。
「臨床における疼痛はOAの最も重要な症状の1つである。」と研究責任者のAlex MacGregorは述べており、「遺伝的関連解析に必要な多くの症例数を達成しようとした研究では、疾病発見の際に、疼痛がX線学的OAの代用として使われることが多くなっている。」と指摘した。しかし、OAの集団研究において、臨床における疼痛とX線学的に認められるOAとの間に相関がないことはよく知られている。本研究の結果は、OAの遺伝的研究において、この2つを互いに代用として用いるべきではないという主張を裏づけるものである。
本研究では、TwinsUKコホートから抽出した991組の一卵性双生児と1,074組の二卵性双生児に、直近1ヵ月に肘、膝、大腿部、手、足、頸部、背部に疼痛を感じたことがあ るかを尋ねる質問票への回答を求めた。上記部位の疼痛発生率は17~46%であり、一卵性双生児のcase-wise一致率は二卵性双生児よりも高いことにより示唆される遺伝的 影響が認められた。
「解析の結果、異なる部位での疼痛の報告は一様に相関し、分散のほとんどが1つの共通因子によって説明できることがわかった。この因子は遺伝的に強く決定され、遺伝率 は46%であった。」とMacGregorは説明している。
この所見は、X線学的OAの遺伝的決定が部位特異的であることを示した同研究グループの以前の研究とは対照的であった。しかし、データは、線維筋痛症および広範囲に わたる慢性疼痛など、複数部位で疼痛を感じる病態の遺伝的基盤に関する新たな根拠と一致している。
本研究者らは、OAにおける疼痛の報告およびX線学的変化の遺伝的基盤はおそらく異なると結論づけている。さらに、MacGregorは、「OA患者にとって疼痛はX線学的変 化よりも臨床的重要性が高いため、疼痛報告の遺伝的基盤を追求することは本疾患患者にとって意味があると考えられる。」と述べている。
doi: 10.1038/nrrheum.2010.110