関節リウマチの病因におけるIL-17の二重の役割
Nature Reviews Rheumatology
2010年9月1日
Rheumatoid arthritis IL-17 the multitasker—a dual role in RA pathogenesis
関節リウマチ(RA)患者は、1型ヘルパーT細胞(TH1)のシグナル伝達の系統的欠如により、感染症に特に罹患しや すいことが知られている。TH1シグナル伝達が欠如すると、インターフェロン(IFN)-γ産生が低下し、インターロイキン(IL)-12およびIL-18に対する反応が低下する。Tohらは、ex vivo 研究から得られた新たな知見より、IL-17は17型TH(TH17)の免疫応答を誘導するだけでなく、IL-12受容体のβ2サブユニット(IL-12Rβ2)を選択的に阻害することにより、TH1に関連する機能を直接障害することを示した。
フランスLyon大学の著者ら研究グループは、RA患者16例および年齢をマッチさせた健常対照者10例から末梢血単核細胞(PBMC)を分離し、IL-12またはIL-17、もしくは その両者により24時間刺激したところ、RA患者のPBMCでは、IL-12により誘導されるIFN-γ-mRNAおよびIL-12Rβ2 mRNAの発現量が健常被験者と比べて減少していることを見いだした。さらに著者らは、IL-17の存在下では、いずれのPMBCにおいても、このような減少度が増大し、IL-17受容体を阻害するとこの変化が抑制されることを示し た。本研究の指導者であるPierre Miossecは、「IL-17は、PBMCのIL-12Rβ2の発現を抑制し、その結果IL-12に対する反応が鈍くなり、IFN-γ産生量が低下する」と述べている。IL-12により誘導されるIFN-γ mRNAおよびIL-12Rβ2mRNAの発現は、明らかにIL-17により阻害されるのに対して、IL-12Rβ1 mRNAおよびIL-23R mRNA量は同じ条件下で増加した。
Miossecらは次に、RA患者由来の滑膜細胞では、IFN-γとIL-23RmRNAに比べてIL-17とIL-12Rβ2mRNAの発現量が増加していることを見いだした。この結果はTH17免疫応答 へのシフトを示唆するものである。さらに、RA滑膜細胞をex vivoでIL-17により刺激すると、IFN-γ mRNAレベルの低下、およびIL-1、IL-6、マトリックスメタロプロテアーゼ8のmRNA発現量の増加が認められた(しかし、IFN-γで刺激した場合この現象は認められなかった)。
これらの結果から、IL-17は、TH17の分化を促進するプロセスにおいて、IL-12およびIFN-γシグナル伝達を阻害することによって、RA患者にみられるTH1の系統的欠如に寄与している。したがって、RA患者では、IL-17の阻害により生体防御作用のあるIFN-γ発現が回復する可能性がある。
doi: 10.1038/nrrheum.2010.131