神経成長因子阻害薬は変形性関節症の疼痛を緩和する
Nature Reviews Rheumatology
2010年12月1日
Osteoarthritis Inhibitor of nerve growth factor relieves OA pain
変形性膝関節症患者に対する概念実証研究において、神経成長因子(NGF)に対するヒト化モノクローナル抗体であるtanezumabの投与により、疼痛が緩和され、関節機能も改善されることが示されている。このNancy Laneらによる試験の結果は、New England Journal of Medicine に発表された。
「NGFが感覚神経性疼痛を誘導する重要な蛋白質であることは、20年以上にわたり知られている」とLaneは説明する。過去10年間に実施された動物研究では、NGFの 遮断が痛覚脱失に有効であることが示され、第I相臨床試験では、tanezumabが迅速かつ持続的な疼痛緩和を誘導することが示された。第II相臨床試験でもこれらの 結果が裏づけられる一方、tanezumab療法は軽症または中等症の有害事象に関連することが示されている。
本研究では軽症から重症の膝OAを有する患者450例を組み入れ、tanezumabをいくつかの用量(体重1kgあたり10、25、50、100、200μg)のうち1用量またはプラ セボの投与を受ける群に無作為に割り付けた。主要評価項目としては、試験の1日目および56日目の全般的反応および歩行時の膝痛の患者による評価を選択した。「中等 症から重症の膝OA患者は、歩行中に痛みが増し、活動していない時は痛みが軽減することが多いが、大部分の研究では、活動とは関係なく膝の疼痛についてのみ質問 している」とLaneは指摘している。
16週間後、8週間おきにtanezumab注射を2回受けた患者は、歩行中の疼痛低下率の平均値がプラセボ投与群の患者よりも高いことを報告した。(各用量のtanezumab 群45~62%vsプラセボ群22%、P < 0. 001)。有効性は用量依存的であり、より高用量で疼痛が最も緩和された。患者による全般評価スコアも、tanezumab群の方 がプラセボ群よりも上昇した。tanezumab療法による有害事象については、頭痛の頻度が最も高かったが、上気道感染症および錯感覚もtanezumab群患者では68% に発生したのに対し、プラセボ群では55%であった。
「この経路における疼痛緩和のための非麻酔系鎮痛薬の見通しは明るいが、さらに情報を得る必要がある」とLaneは述べている。NGFがどのように関節痛に関与し ているのかを確認することが、OA治療に対する本アプローチ法の成功の鍵である。
doi: 10.1038/nrrheum.2010.189