免疫原性は関節リウマチ治療効果の将来的な成否を予測させる
Nature Reviews Rheumatology
2011年1月4日
Rheumatoid Arthritis Immunogenicity is predictive of future treatment success in RA
最初の腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬が奏効しなかった関節リウマチ(RA)患者には、別のTNF阻害薬が処方されることが多い。Jamnitskiらは、Annals of the Rheumatic Diseasesで、最初のTNF阻害薬による治療が不成功であった理由を特定することが次のTNF阻害薬による治療を成功させるのに重要な意味を持つことを報告した。「われわれは、薬剤への無反応が抗薬物抗体の存在下または非存在下で起こったかによって、2剤目のTNF阻害薬に対する反応が影響を受けるという仮説を立てた」と、本研究の筆頭研究者であるGerrit Jan Wolbinkは説明している。
研究者らは、新たにエタネルセプト(50mg週1回または25mg週2回)による治療を開始したRA患者292例を組み入れた。これらの患者のうち89例(以後「切り替え例」 と呼ぶ)は、以前にインフリキシマブ(30例)またはアダリムマブ(59例)による治療を受けていた。残る203例は、TNF阻害薬の投与歴がなかった。研究者らは、切り替え例の抗インフリキシマブ抗体および抗アダリムマブ抗体の発現量を測定し、これらの患者の約半数にインフリキシマブまたはアダリムマブに対する抗体が存在することを見 いだした。この3種類の患者コホート(TNF阻害薬投与歴のない患者、抗薬物抗体を有する切り替え例、抗薬物抗体を持たない切り替え例)で、ベースライン時およびエタ ネルセプト療法開始4、16、28週間後の疾患活動性を評価した。28関節疾患活動性スコア(DAS28)および欧州リウマチ学会(EULAR)改善基準の両方を評価に用いた。
Wolbinkらにより、エタネルセプト療法開始28週間後の、DAS28スコア改善の平均値は、TNF阻害薬投与歴のない患者の方が切り替え例よりも有意に高いことが明らかになった(2.1±1.3 vs 1.61±1.4、P =0.015)。この差は主に、抗薬物抗体を持たない切り替え例が原因であり、この患者群は、DAS28スコアの変化がTNF阻害薬投与歴のない患者よりも有意に小さかった(2.1±1.3 vs 1.2±1.3、P =0.001)。対照的に、TNF阻害薬投与歴のない患者とTNF阻害薬抗体を持つ切り替え例の間には有意差が認められなかった(2.1±1.3 vs 2.0±1.3、P =0.743)。さらに、EULAR改善基準により、エタネルセプトが無効であった患者の割合は、抗薬物抗体を持たない切り替え例の方が抗薬物抗体を持つ切り替え例よりも高かった(33% vs 9%、P =0. 014)。
著者らは、以前のTNF阻害薬による治療が原因である抗薬物抗体の有無は、次のTNF阻害薬による治療の成功に影響を及ぼし得ると結論した。Wolbinkは「免疫原性を有する抗体製剤の投与を受ける患者では、簡便かつ標準化された薬物濃度の定量および免疫原性試験を行う一般的なニーズがある。これらの定量法により、臨床医は非奏効例のタイプを識別することが可能になるだろう」と述べている。
doi: 10.1038/nrrheum.2010.208