カテプシンK阻害は骨破壊を阻止するが、骨リモデリングはメリーゴーラウンドの様に回り続ける
Nature Reviews Rheumatology
2011年4月1日
Metabolic bone diseases Cathepsin K inhibition halts bone destruction, while remodeling merry-go-round runs merrily on
閉経後女性の骨粗鬆症に対する、最新のカテプシンK阻害薬であるONO-5334の2年間の臨床試験から、12ヵ月のデータが発表されたことで、骨粗鬆症に対するカテプシンKの標的治療は臨床使用にさらに一歩近づいたと言えよう。カテプシンKは破骨細胞から分泌され、骨の有機マトリックスを分解するシステインプロテ アーゼである。「本試験は、odanacatibの有効性および安全性の結果が発表された後、明らかに安全かつ用量依存的であるが、構造的に異なる経口カテプシンK阻害薬を用いて 肯定的結果が得られた2報目の臨床研究である。」とBritish Columbia大学のDieter Brömmeは語る。Brömmeは、リウマチ性疾患における標的としてプロテアー ゼを研究しており、本試験には関与していない。
本試験(Journal of Bone and Mineral Research に発表)は、in vitro 、サル、健康な女性において成功を収めた研究に引き続いて行われた初の概念実証研究であり、骨粗鬆症の閉経後女性295例でONO-5334の有効性と安全性を検討した。患者は、以下の5つの治療群のうちの1つに無作為に割りつけられた。ONO-5334 50mgを1日2回、100mgを1日1回、300mgを1日1回、アレンドロン酸、プラセボ、である。本研究は、ONO-5334とプラセボの直接比較を行う検出力を備えていたが、アレンドロン酸との比較はできず、主要評価項目は腰椎の平均骨密度(BMD)であった。著者らは、骨代謝回転のマーカーもいくつか測定した。
ONO-5334の3用量は全て有効性を示し、300mg群でBMDが最も増加した。例えば、12ヵ月目の腰椎BMDは、ベースラインと比べて5.1%( ±0.49%)増加した。ONO- 5334 50mgの1日2回投与群の成績は100mgを1日1回投与群よりも良好であった。これは、徐放性製剤の開発により、本阻害薬の血清トラフ濃度を上昇させることで至適用量 を減少させる可能性を示唆している。骨吸収マーカー濃度は、ONO-5334およびアレンドロン酸により、初回測定時点(1.5ヵ月)およびそれ以後に低下したが、アレンドロン酸は骨形成マーカーに対しても明確な抑制作用を示したのに対し、ONO-5334にはそうした抑制作用が認められなかった。
このように、骨粗鬆症におけるONO-5334の骨吸収に対する作用は、12ヵ月間にわたり、最も処方頻度の高い既存の治療薬であるアレンドロン酸により得られた効果と同等 であったが、カテプシンKを標的とすることに関して専門家を真に興奮させたのは、骨吸収と骨形成の連結を解く能力であり、これにより長期の治療ベネフィットが増加する可能 性がある。「骨特異的アルカリホスファターゼ、オステオカルシン、プロコラーゲンなどの骨形成パラメータに対して、ONO-5334の方がアレンドロン酸よりも及ぼす影響が小さかったことは、極めて有望だ」とBrömmeは続け、カテプシンKの阻害は骨粗鬆症に対する既存のアプローチ法に勝る可能性があると説明した。既存のアプローチ法は全て、骨 形成と骨吸収のバランスを調節する細胞コミュニケーションネットワークを破壊するものであるからだ。
「骨形成と骨吸収のマーカー濃度の変化は通常並行してみられる」と本研究の筆頭著者であるRichard Eastellは同意する。そして、「この治療法によりこれらのマーカー濃度が並行して変化しないという結果から、3年以上の長期間において骨の密度および構造に及ぼす効果が大きくなる可能性が高くなる」と述べている。
骨粗鬆症の既存の治療法は、アレンドロン酸などのビスフォスフォネートを含め骨吸収抑制作用を有するか、テリパラチドのように骨形成促進作用を有するかである。ビスフォ スフォネートは破骨細胞の機能に干渉するが、テリパラチドは骨芽細胞数を増加させることにより骨形成を亢進させる。にもかかわらず、いずれも長期療法には理想的とは言えない。一般に、骨粗鬆症薬の効果は、骨リモデリングの動的な性質により損なわれる。時間の経過とともに、フィードバック機序が開始され、骨形成の亢進により骨吸収の抑制 とのバランスを取るか、その逆の現象が起こるためである。Eastellらは、このような長期療法の欠点をONO-5334が是正してくれることを期待している。
本試験は予備試験であり、長期有効性を評価するには期間が短い。しかし、ONO-5334投与後に骨形成マーカー抑制が認められなかったことは、カテプシンKの阻害によっ て細胞の活動を妨害することなく、または少なくとも妨害によって「修正」フィードバックサイクルを開始させるほどには細胞活動を妨害せずに破骨細胞の機能が抑制できることを示す肯定的な所見である。
著者らは現在、本試験の最終データを解析中であり、3年間にわたる骨折予防の大規模第3相有効性試験に用いる至適用量および剤形を検討している。本治療法が、アレン ドロン酸との直接比較、または現在開発中のもう1つのカテプシンK阻害薬であるodanacatibとの比較でどのような成績を示すかが今後も注目される。
doi: 10.1038/nrrheum.2011.17