Notch経路の阻害は線維症を予防する
Nature Reviews Rheumatology
2011年4月1日
Connective tissue diseases Notch inhibition prevents fibrosis
新たな研究の結果から、全身性硬化症(SSc)患者ではNotchシグナル伝達経路が活性化されており、いくつかのSScマウスモデルでこの経路を阻害すると、皮膚線維症が予防されるだけでなく、確立された皮膚肥厚の消退が誘発されることが明らかになった。線維芽細胞の活性化に起因するこのような線維症は、SScの特徴である。
Notchシグナル伝達は、細胞分化の制御に不可欠であり、この経路の異常な活性化は、複数の悪性疾患の病態形成に関与している。Notch受容体がγ-セクレターゼにより切 断されると、Notch細胞内ドメイン(NICD)が放出され、これが核に移動しNotch標的遺伝子を活性化させる。
免疫組織化学により、SSc患者11例の皮膚生検サンプルからNICDの蓄積が検出されたが、健常対照者8例のサンプルからは検出されなかった。SSc患者ではNotch標的遺伝 子HES1 のメッセンジャーRNA濃度も増加していた。Notch経路をDAPT(γ-セクレターゼ阻害薬)で遮断したところ、皮膚線維症のブレオマイシン誘導性マウスモデルおよび Fbn1Tsk マウスモデル(それぞれ、早期および後期のSScのモデル)の皮膚肥厚が減少した。著者らは、ブレオマイシン誘導性線維症の改変モデルにおいて、Notchシグナル伝達の阻害により、確立された肥厚が消退したことも明らかにした。6週間ブレオマイシンを投与し、最後の3週間にDAPTを投与したマウスでは、抗線維化薬を投与しなかったマウ スに比べて皮膚線維症が顕著に減少した。
著者らは、Notchシグナル伝達の阻害が抗線維化療法の分子標的となる可能性があり、今回得た知見によってSSc患者に対するNotch経路阻害薬の臨床試験が行われることに なるだろうと結論づけている。
doi: 10.1038/nrrheum.2011.24