カドヘリン11:線維芽細胞の重要な炎症メディエーター
Nature Reviews Rheumatology
2011年6月21日
Inflammation Cadherin 11 a key mediator of fibroblast inflammation
滑膜線維芽細胞は、主にIL-6の産生を介して、炎症性関節炎における軟骨破壊に何らかの役割を果たしていることが知られている。カドヘリン11(CDH11)は、線維芽細胞で選択的に発現されており、重要な炎症メディエーターであると考えられている。例えば抗CDH11モノクローナル抗体は関節炎マウスモデルの炎症を抑制し、CDH11欠損マウスでは関節軟骨の損傷が低減していた。今回Changらは、CDH11が線維芽細胞の炎症を促進するメカニズムを明らかにした。
関節リウマチ(RA)患者由来の培養滑膜線維芽細胞を、擬似的な細胞間シグナル伝達が行われるようデザインしたCDH11–Fc融合蛋白で刺激したところ、用量依存的にIL-6産 生が誘発された。サイトカイン抗体アレイでは、CDH11が、CC-ケモカインリガンド2、CXC-ケモカインリガンド1、IL-8、マクロファージ遊走阻止因子の分泌も有意に増加させたことが明らかになった。これらの知見は、CDH11は、滑膜線維芽細胞に働いて、炎症誘発性因子の分泌を誘発するシグナル伝達受容体として機能していることを示している。
次に著者らは、CDH11により活性化されるシグナル伝達経路の特定を試みた。マイトジェン活性化蛋白質キナーゼ(MAPK)であるJNKとERK、そして転写因子であるNFκ B(活性化されるとIL-6産生に働くと知られている)は、滑膜線維芽細胞をCDH11–Fcで刺激した後にすべてリン酸化されたことがイムノブロッティング解析により明らかに なった。
炎症下の微小環境(RA滑膜など)におけるCDH11の役割を模倣するために、腫瘍壊死因子(TNF)およびIL-1β存在下で、線維芽細胞をCDH11–Fcで刺激した。滑膜線維芽細胞にIL-6を強力に誘導しない程度の濃度のTNFおよびIL-1βを加えて培養した。CDH11–Fcを添加すると、TNF、IL-1β、またはCDH11–Fc単独で刺激した場合に比べ、有意に高レベルのIL-6分泌が誘導された。これらのデータは、IL-6産生において、CDH11の関与が他の炎症性サイトカインと相乗作用を示すことを示唆しており、これが関節炎における炎症の発症や遷延に寄与していると考えられる。
最後に、IL-6産生に対するCDH11の影響を、CDH11欠損B6マウスのK/BxN血清移入炎症性関節炎モデルを用いてin vivoで検討した。TNFおよびIL-6の発現、足関節周囲 径および臨床炎症スコアはすべて、野生型に比べCDH11欠損マウスの方が有意に低かった。このことは、CDH11が滑膜のサイトカイン産生にin vivoでも影響を与えていること を示している。
著者らは、CDH11が、MAPKおよびNFκBシグナル伝達を介して滑膜線維芽細胞活性化および炎症に重要な役割を果たしていると結論づけている。
doi: 10.1038/nrrheum.2011.85