Primer
線維筋痛症
Nature Reviews Disease Primers
2015年8月13日
Fibromyalgia
線維筋痛症は、広範囲にわたる慢性疼痛、睡眠障害(起床時の不快感など)、肉体疲労、認知困難を特徴とする、一般的によく見られる疾患である。この疾患の定義、病因および治療には議論があり、この疾患の存在に異を唱える者さえいる。1990年に発表された米国リウマチ学会議(American College of Rheumatology:ACR)の分類基準では、圧痛点(筋肉および筋腱接合部上の圧痛部位)が多く認められること、および全身の広い範囲にわたって慢性疼痛があることと策定された。しかし、2010年のACR予備診断基準では、圧痛点の要件が除外され、疼痛の広がりがより小さいものも容認することとされた。さらに、患者報告による身体症状および認知困難が重要視されるようになった。線維筋痛症は、世界のあらゆる集団で発症し、有症率は一般集団の2~4%である。実際に線維筋痛症と診断された場合の有病率(管理上の有病率)は、はるかに低いと思われる。線維筋痛症の発症モデルでは、生物学的変動と心理社会的変動とが相互作用して、慢性疾患の素因、誘発および悪化に影響を及ぼすことが示唆されているが、詳細についてはよく分かっていない。診断には、典型的な症状クラスターの既往歴をはじめ、診察によって十分に説明できる身体症状があれば、それを除外することが必要である。最新のエビデンスに基づくガイドラインでは、集学的治療の価値が強調されており、この治療には、疼痛、疲労、睡眠障害、および気分障害など、個々の患者の症状に合わせた非薬物治療および選択的薬物治療の両方が含まれる。
doi: 10.1038/nrdp.2015.22