心的外傷後ストレス障害
Nature Reviews Disease Primers
2015年10月8日
Post-traumatic stress disorder
心的外傷後ストレス障害(PTSD)は一般集団の5~10%に発症し、女性では男性の2倍よく見られる。PTSDの発症原因はトラウマ曝露であるが、生物学的および心理社会学的リスク因子が症状発現、重症度および慢性化の予測因子として注目されるようになってきた。PTSDは、脳循環および神経化学、ならびに細胞性、免疫性、内分泌性および代謝性機能など、さまざまな生物学的システムに影響を及ぼす。治療は、薬物治療と心理療法の併用によって行われるが、概して心理療法が最大の効果を発揮している。PTSDの病態生理に関する研究は、当初、ストレス反応および恐怖記憶の獲得と消去に関する精神生理学と神経生物学に集中していた。しかし現在は、識別因子に関心が集まるようになった。識別因子とは、トラウマや精神的回復力の促進に対する反応が個人によって異なることを説明するもので、これらには、遺伝的および社会的要因、脳の発達プロセス、乳幼児期をはじめそれ以外のストレスの多い時期に起きた出来事による生物学的および心理的影響の蓄積などがある。現在、PTSDの分野では、疫学的、生物学的、遺伝的および治療学的研究に影響する診断基準の変動が問題になっている。今後、新たな生物学的方法論が開発されて、多様で遺伝子的に複雑な脳障害への大規模なアプローチが可能となり、診断および治療への個別化アプローチが開発されることが期待される。
PrimeView
このPrimeViewでは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)について示されている。女性、社会経済学的弱者および戦闘経験のある軍関係者はPTSDの特別なリスクを有している。PTSDの管理方法と発症機序についても要約している。
本Primerの図解サマリー
doi: 10.1038/nrdp.2015.57